車座になって円卓を囲む。利用者によると、普段の会議室よりも目線が合いやすいという。資料が風にあおられるといったプチトラブルも楽しい(撮影/伊ケ崎忍)
車座になって円卓を囲む。利用者によると、普段の会議室よりも目線が合いやすいという。資料が風にあおられるといったプチトラブルも楽しい(撮影/伊ケ崎忍)

 そよぐ風、降り注ぐ陽光、青々とした芝生。ピクニックさながらの環境で会議や仕事ができる。そんな「アウトドアオフィス」が人気だ。

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 議論が煮詰まり、終わりが見えない会議中。目を移すと窓の外にはそよぐ緑、降り注ぐ日差し。こんな日に、自分はいったい何をしているんだろう……。社会人なら誰でもそう感じたことがあるのでは。

 ならば会議室ごと、いや、いっそのことオフィスごと、屋外に移してしまおう。そんな「アウトドアオフィス」という試みが広がり始めている。

「◯◯さんはどう思う?」

「あ、それ面白いね!」

 広々とした芝生に張られたテントから会議の声が漏れてくる。

 品川駅港南口からすぐの複合ビル「品川シーズンテラス」(港区)では5月14~18日、ビルに隣接する芝生広場にテントやテーブルを設営し、仕事場として使えるようにした。テントの中では円卓を囲んで車座に。日よけつきのテーブル席もある。最大8人で会議ができ、電源やWi-Fi、ホワイトボードも備えられている。

 1時間1千円で誰でも使え、数十人が座れる席が、連日ほぼ満員。5日間で約400人が利用した。品川シーズンテラスの管理会社で、イベントを主催したNTT都市開発によると、社内会議、社外との打ち合わせ、事務作業など様々な使い方をする人がいたという。

 会社経営の上田浩史さんはノートPCや資料を持ち込み、同じ事業に取り組む他社の2人と打ち合わせをした。

「開放的な雰囲気のなかで、いつもよりもリラックスしながらミーティングできた」

 部署での定例会議に利用したという女性は笑顔で話す。

「草のにおいも気持ちよかったし、アイスコーヒーがいつもよりもおいしく感じた。普段の会議では耳しか働いていないけれど、五感全部を使って仕事ができた気がする」

 一人で仕事をしていた街づくりコンサルタントの若尾健太郎さんは「集中したりリラックスしたり、メリハリをつけて仕事ができた。カフェだとあまりくつろげないし周りが気になる。家だとリラックスしすぎてしまうこともある。新鮮でした」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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