キスを手助け「添い寝介助」に見る「障害者の性問題」の本質

野村昌二AERA#セックス#恋愛

キスを手助け「添い寝介助」に見る「障害者の性問題」の本質

NPO「ノアール」理事長 熊篠慶彦さん(48)/障害者の性への理解を訴える、脳性麻痺の活動家として知られる。性に関する支援や啓発活動に取り組む(撮影/山本倫子)
 障害者が抱える「性」の現実とは何か。身体障害者の性に関する支援や啓発活動に取り組むNPO「ノアール」(神奈川県)の理事長で、脳性麻痺で重度障害もある熊篠(くましの)慶彦さん(48)は次のように話す。

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「障害者の性はタブーにすらなってなく、共通の問題として認識されていない。そもそも、障害者は性の悩みを口にすることさえできません」

 昨年、ノアールはALS(筋萎縮性側索硬化症)とミオパチーという難病を患い、ほとんど身体を動かせないカップルの「添い寝介助」をサポートした。添い寝介助とは、自由に体を動かすことのできない障害者同士の身体を触れさせたりキスの手助けをしたりすること。

 当日は4人の介護スタッフが2人を添い寝させると、その場を離れ隣室で待機。出会って5年、それまで視線を交わすことしかできなかった2人は、わずかな時間だが、手を重ね、キスをすることができたという。熊篠さんは言う。

「普段、この2人にはそれぞれに介助者がいます。しかし、なぜその人たちに頼めず僕たちに相談に来たのか。そこに障害者の性が自律できない本質がある」

 介護保険制度において訪問介護(ヘルパー)サービスでは、利用目的が規定されている。例えば掃除や料理などは「生活援助」として、排泄や入浴介助などは「身体介護」として認められているが、性の悩みは規定されていない。性的サービスを頼むと「問題行動」のレッテルを貼られかねず、必然的に障害者は性の悩みを語るのは許されないと感じるようになる。仮に口にできたとしても、介護の現場で働く専門職には「性」の知識がないため困らせるだけだという。

「障害者と福祉の現場、この両輪が一緒に回らなければ、障害者の性は自律しない」(熊篠さん)

 ノアールに共感し添い寝介助をした、作業療法士の高(※)橋由紀さんは障害者の性をこう話す。

「障害とはあくまでどういう機能がどう変化しているのかという指標。障害を持っているというだけで一概に性欲を否定されたら、とてもつらいと思います」

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