出産後6年間、何度となく繰り返されるいさかいに、アヤさんは心底疲れ切っていた。

いつからこうなったのか。交際中、2人は対等な関係だった。しかし、36歳で長女を出産。慣れない育児に奔走する中、夫は家事も育児もせず、仕事で帰宅も遅かった。当然、ワンオペ状態に。睡眠時間を確保するのに精いっぱいで「性欲はどこかに飛んでいった」。夫は第2子を望んでいるが、アヤさんは「とても考えられない」という。

「家事も、セックスも……すべて私が『与える側』になってしまいました。夫にとってセックスは、自販機に100円入れたらジュースが出てくるみたいに『結婚したら当然与えられるもの』という認識なんです」

 ある時、仕事の関係で夫に子どもの面倒を頼んだ。帰宅すると、夫は目をらんらんと光らせ、

「今日は頑張ったから、いいよね? ご褒美、もらえるよね?」

 セックスは「ご褒美で与えるもの」か? 疑問に思いつつ、時に夫に押し切られることも。

「完全に『奉仕の心』。マザー・テレサのような気分」(アヤさん)

「セックス」も「子ども」も、人によって価値観は異なるが、人生の重要な要素になりがちだ。だからこそがんじがらめになる。解決の糸口はないものか。

 妊活サポートアプリ「コウノトリ」は、生理日を入力すると、オギノ式で妊娠しやすい排卵前の日が自動的に計算され、夫婦間で共有できるというもの。直接「この日だよ」と伝えるのに抵抗のある女性から好評だ。

 開発者のアマネファクトリーの谷本純さん(43)は、結婚後子どもを授かるまでに8年ほどかかった。病院で調べても、夫婦共に異常なし。タイミング法を試したが、「今回はいけるかも」と期待しては「またダメか」と肩を落とす日々が数年続いた。

「今周期もダメ、今周期もダメというのが何年も続くと、だんだんタイミングを取ること自体が怖くなってしまい。排卵日を伝えることで、夫が嫌な思いをしていないかも心配でした」

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