しかし、力が強くなりすぎれば歪みも生じる。元経産官僚で民間のシンクタンク「社会保障経済研究所」代表の石川和男さんは危うさを感じている。

「政策を考える際、増税で財源確保すべきだという人もいれば、国債発行で賄えばいいという人もいる。数が拮抗していればいいが、経産省中心の今の政権ではパワーバランスが取れていない。対抗力としての財務省を復権させなくてはならない」

 財務省の立ち位置が弱くなっている最たる例が、消費税増税を掲げながら2回も延期している現実だと、石川さんは話す。
「かつてはアドバルーン官庁と呼ばれた旧通産省的な政権運営のもと、政策の評価を済ませないまま、毎年新しいキャッチフレーズの政策が企画されている。財務省が強ければ、牽制機能が働くはずだが、そうでなくなってしまっている」

 森友学園も加えたモリカケ問題に日報、セクハラ問題。安倍政権の支持率が下がり、党内からも政権批判の声が聞こえてくる。自民党総裁選で「安倍3選危うし」となれば、それは「経産省官邸危うし」と同義だ。政治ジャーナリストの角谷浩一さんはこう話す。

「国民民主党の誕生は度重なる野党の離合集散にすぎず、審議拒否も与党の『野党がサボっている』というキャンペーンが功を奏し、国民の理解は得られなかった。今後も内閣支持率は乱高下するだろうが、ゴールデンウィーク期間中の自民党内の独自情勢調査の数字も悪くなく、官邸、自民党内には楽観論が広がっている。岸田文雄政調会長が安倍支持を言い出せば、一気に安倍3選が決まるだろう」

 周囲から何を言われようと、安倍首相を守る。だが、「首相だけを守るためではない」(経産省関係者)。経産官僚にとっては官邸の支配権、すなわち自らの「省益」を守ることでもある。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年5月21日号より抜粋