■「上の子がいるからいいじゃない」「次の子が生まれたんでしょ」


 亡くなったあの子の代わりはほかにはいない。子どもを失う悲しみは、他の子どもがいることで薄れるものではない。

■「早く忘れなさい」「生まれる前で良かった」
 赤ちゃんを亡くした事実をないことにはできないし、我が子の死は生涯忘れることはできない。また、 死産の場合は戸籍に記載されないことを「良かったね」と言う人がいるが、親にとってはおなかにいた命を無視されたように感じる。

■「もう◯カ月(◯年)も経っているのに」「いつまで落ち込んでいるの」
 我が子の死を受け止め、前を向き始められるには、決まった期間はなく、心身の回復にかかる時間も人それぞれ。それを勝手に決めつけてはいけない。何十年以上前の赤ちゃんの死をいつまでも引きずっている人もいる。

■「人生は起きることすべてに意味がある」「神様は乗り越えられない試練は与えない」
 赤ちゃんを亡くした人自身が今回の体験に何か意味を見出し、前を向けることもあるが、体験者でもない人から言われても素直に聞けない。自分の子どもがなぜ死ななければならなかったのか勝手に意味づけしないでほしい、と怒りを増してしまう。

 どんな言葉をかけていいかわからなくなった人もいるかもしれない。ただ、励ましにならない励ましや、慰めにもならない慰めの言葉は、赤ちゃんを亡くした親たちにとってますます孤独感を募らせていくきっかけになる、ということは確かだ。周囲の人たちは、無理に気の利いたことを言おうとせずに、ただ話を聞き、その悲しみに心を寄せるだけでいい。

 また、亡くなった我が子の存在をなかったことのようにされることがつらいという人は多い。家族や親しい友人であれば、赤ちゃんのことを聞いていいか尋ねてみて、もし話したい様子だったら話題にし、名前があれば赤ちゃんの名前を呼ぶことも、親たちにとって救いになることがある。

 傷つけてしまうのが人ならば、ちょっとした心遣いで救うことができるのも人だ。

 横浜市の鵜飼礼子さん(49)は、生後8日で亡くなった希望(のぞみ)くんの遺骨を1年間手元に置いていた。「納骨するまでに、いろんな景色を見せてあげたい」と、外出のときにはいつも写真と遺骨をバッグに入れて、一緒に連れて行った。

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