財務省の今回の対応は「そのどちらにも反している」(早田弁護士)のが実情だ。財務省の認識はなぜ、世情と乖離するのか。早田弁護士はこう答えた。

「民間は株主や顧客の批判にさらされ、セクハラ訴訟が起きると社内の認識もただされます。そうした批判にさらされてこなかった結果、財務省は自己批判できないのでは」

 フェイスブックでネット署名をシェアした在京メディアに所属する50代の女性編集者はこう憤る。

「財務省という権力を使ったパワハラ。被害者を特定するための指示を出したり、文書をつくったりした官僚の方たち、ほんとにみっともないです。あなたたちこそ顔を出して、『僕は、福田さんはセクハラをやっていないと思います』って、おっしゃったら? 言えますか?」

●いきなり抱きつかれる

 福田事務次官の発言とされる音声データのやりとりは、下品な単語の連発で、一般社会の常識では「即アウト」の内容だ。

 被害女性と同じ記者職で官僚への取材経験もある全国紙の40代女性はこう語る。

「真面目な質問にセクハラでまぜっ返すのは一つのパターン。そうやってバカにして、対等な取材相手として見ないんです。質問をしているのに『つきあおう』とか『愛している』とか。そういう人は多いです」

 もちろん、非常識な官僚ばかりではない。世論の動向を知るため記者との対話を重視する官僚もいる。ただ、セクハラ官僚と混同されるのを嫌がり、女性記者を敬遠するケースもあるという。

「今回の件で、すでにそうした動きが出ている。そうなると女性記者の活動の場がますます少なくなるのも問題です」(女性記者)

 記者以外の職場も例外ではない。都内の団体職員の40代女性は、30歳近く年上の理事長からセクハラを受けた。

「いきなり抱きつかれたり、勝手にリップクリームを使われたり。職務に同行した際、どこか静かなところで休もうと言われ、振り切って逃げました」

 その後も、執拗につきまとわれ、副理事長に被害を訴えると、理事長は開き直り逆切れ。依願退職を促す文書が届いた。女性は福田事務次官の姿を見て、怒りを通り越し、こう感じた。

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