「10億分の1秒程度のレーザー光で加工した面を見ると、断面が粗いのですが、10兆分の1秒のレーザー光だときれいに仕上がります。医療分野でレーザーによる『ナノ手術』が行われていますが、細胞の中を光がどのように伝播するのか解析できれば、手術の精度が高まります」

 今まで見えなかったものが可視化できるようになった功績は大きい。たとえば、エンジンの中で燃料がどのように燃焼しているのか、これまでは見られなかった。この技術を使うと、噴射された燃料がシリンダーの中でどのように広がり、点火プラグに引火して爆発するか、目視で確認できる。その仕組みがわかれば、省エネルギー化に一歩前進したことになる。

 中国山東省出身の夏鵬さんは中国の大学を卒業後、先端の光技術を学んで博士号を取り、研究職に就きたいと思い、はるばる日本への留学を決めた。ネットや科学雑誌で探し、京都工芸繊維大学のホログラフィー研究に興味を抱いたという。

「透明なガスの流れの3次元像を可視化する映像が面白かった」

 粟辻教授の研究室に5年半滞在し、現在はつくば(茨城県)の産業技術総合研究所で、光技術の研究を続けている。

 修士課程2年の松中敦志さんは、17年9月から3カ月間、光技術の分野で先端の研究を行っているスペインのジャウメ1世大学に留学し、研鑽を積んだ。今後はホログラフィーの技術を医療分野に応用して、人の命を救う研究をしたいと意気込む。(ライター・柿崎明子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋