竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

予期せぬ異動も自分自身の財産に(※写真はイメージ)予期せぬ異動も自分自身の財産に(※写真はイメージ)
「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

*  *  *

 4月は、職場の環境が変わる時期。大きな人事異動があった会社も多いかもしれません。組織にいれば、異動の経験がない人は少ないでしょう。自分にとって予期せぬ部署への異動もあるかもしれません。でも、人事異動には必ず後になってわかる「意味」があるものです。それを無意味にしてしまうか、自分の成長につなげられるかで、その後のキャリアも変わってくるはずです。

 私にも経験があります。アメリカでの駐在を終え、営業に復帰できると思っていたら、配属されたのは何と広報部。35歳のときでした。私は営業で活躍していきたいと思っていたので、30代後半の貴重な時間を異なる部署で過ごすことは正直、不満でした。そもそも、「広報」が何をする部署かも知らなかったのです。広報部には5年在籍しましたが、振り返ると、その経験はとても貴重なものでした。

 転機は、配属から1年ほどたったとき。大手製紙会社が国内大手企業初の敵対的株式公開買い付け(TOB)を同業の製紙会社にしかけたことがありました。その渦中、三菱商事がTOBを受けた製紙会社の第三者割当増資を引き受け、マスコミから連日、「ホワイトナイト」のように取り上げられ、私はその広報対応を任されました。

 当時の社長に朝から晩まで張り付いて、車の中で状況を報告する。毎日、朝晩の記者対応をする。そうした日々を過ごすなか、トップが判断を下すと会社はどう動き、それをマスコミが報じることで社会にどう影響があるのか、など身をもって学びました。

 その後、40歳から社長秘書になると、より会社の中枢に入り込んで、トップの思考や組織のダイナミズムを知ることができました。今、ローソンの社長という立場になり、すごく貴重な経験だったと改めて思います。当時、私の異動を決めた上司には、今となっては本当に感謝です。結果的に、私の大きな財産となりました。それこそが、最初に申し上げた人事異動の「意味」だと思うのです。

AERA 2018年4月23日号

著者プロフィールを見る
竹増貞信

竹増貞信

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

竹増貞信の記事一覧はこちら