「自らを強いヒーローと思いながら、常にびくびくし、無知」ベトナム帰還兵が語る米国人の本質 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「自らを強いヒーローと思いながら、常にびくびくし、無知」ベトナム帰還兵が語る米国人の本質

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山本大輔AERA
旧ソンミ村の博物館には、米軍の虐殺行為を伝える人形や写真が展示されている(撮影/編集部・山本大輔)

旧ソンミ村の博物館には、米軍の虐殺行為を伝える人形や写真が展示されている(撮影/編集部・山本大輔)

3月10日、南山大学で講演するマイク・ベイム氏。「道義的責任」「道徳心」に基づく行動が重要だと、米国内外で強調し続けている(撮影/伊ケ崎忍)

3月10日、南山大学で講演するマイク・ベイム氏。「道義的責任」「道徳心」に基づく行動が重要だと、米国内外で強調し続けている(撮影/伊ケ崎忍)

「米国はベトナム戦争から何も学んでいない」

【写真】南山大学で講演するマイク・ベイム氏

 3月10日、南山大学(名古屋市)での講演のために来日したベトナム帰還兵の米国人、マイク・ベイム氏(70)と再会した。社会の分断が深刻化する母国を見つめる視線は、ベトナムでの取材で初めて会った10年前より一層厳しさを増していた。

「自身を強いヒーローと思っている米国人の多くが、実は皮肉にも常にびくびくし、物事をよく知らない。トランプ氏は、この恐怖心と無知の二つをうまく利用することに天才的。そうやって大統領になった。最悪の事態だが、起こるべくして起きたとも言える」

 背景にある米国人の本質を理解するには、ベトナム戦争を語る必要があるという。講演の6日後、ベイム氏はベトナムにいた。南北に長い同国中部に位置するクアンガイ省旧ソンミ村(現ティンケ村)で、ベイム氏が奏でたバイオリンの音色は悲しげだった。3月16日、約1千人が参加して現地で開かれた「ソンミ村虐殺50年追悼式典」に出席後、米軍によって50年前に焼き尽くされた集落の跡地で、ベイム氏が捧げた鎮魂の演奏だ。

 ベトナム戦争中だった1968年の同日、この村では米軍による大虐殺が起きた。敵兵が紛れ込んでいると疑って、無抵抗の村民504人が無差別射撃などで殺された。ベイム氏の友人で、ベトナム戦争を研究している南山大学の藤本博教授(68=今春退職)によると、犠牲者の約8割が女性や子ども、高齢者だった。その惨状は今、現地に立つ博物館の写真や人形で後世に伝えられている。

 虐殺を知った米兵の一人が勇気を持って米政府に告発し、メディアも独自取材で報道したことで発覚。米国内で反戦運動を勢いづかせる象徴的な出来事となったが、米軍がベトナムで行った「300件以上とも言われる虐殺行為の氷山の一角に過ぎない」と、藤本教授は話す。

 ベトナム戦争に20歳で志願したベイム氏は68~69年にかけ、サイゴン(現ホーチミン)郊外で米陸軍の情報部門に所属していた。戦闘には一度も参加していない。虐殺行為があったことは軍が隠していたので、当時は全く知らなかった。

 それでも罪の意識は強い。

「米軍が女性や子どもらを虐殺した事実に私は背を向けることができない。我々が持つ全ての権利が奪われてもおかしくないほどの悪を犯した米国には、その罪を償い続ける道義的義務がある。その思いが今も私を突き動かしている」


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