日本代表の志渡一志ヘッドコーチも、金メダルの可能性を問われると「頑張れば行けそうな気もしますけど……」。

 そんな21歳を変えたのが、平昌パラリンピックだった。

 最初の種目、滑降で銀メダル。重圧から解放された。スーパー大回転、スーパー複合で続けて銅メダル。

「悔しい。金が欲しいです」  大会前には聞けなかった、強い思いがあふれ出た。

 天候による日程変更で、4種目目は苦手の回転ではなく得意の大回転になった。

「金を取るなら、ここしかない」

 弱気な自分はもういなかった。

 村岡のメダルラッシュで注目を浴びたチェアスキーだが、競技人口は多いとは言えない。村岡が金メダルをとった平昌パラリンピックの女子大回転に出場した選手は10人。難度の高い滑降で完走できたのは、7人のうち4人だった。国内にも村岡と同年代の女子選手はいない。村岡は冗談交じりに振り返る。

「体験会に行くうち、若手として期待されやめられなくなった」

 世界のレベルは上がりつつある。ソチではスーパー大回転で狩野亮(32)が2連覇するなどメダル五つだった日本男子アルペンだが、平昌では苦戦。女子もソチ5冠のアナ・シャフェルフーバー(独)が大回転では表彰台を逃した。この4年で勢力図は激しく入れ替わっている。

 念願の金メダルを手にして、村岡は言った。

「もっとたくさん金メダルを取れる選手になりたいと思います」

 4年後の北京大会は25歳。レベルアップしてくるであろうライバルに立ち向かうことになる。(朝日新聞社会部・高野遼)

AERA 2018年3月26日号