だが、影響が甚大な国は当然ある。欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は「断固とした対抗措置を取る」と発言し、オートバイのハーレーダビッドソンやリーバイスのジーンズなどへの輸入関税導入に触れた。中国もEUと共同で対抗措置を取る方向だ。このまま欧米や中国が互いに高い輸入関税をかける貿易戦争となれば、どうなるか。

「最悪の場合、リーマン・ショック級の不況が予想される」と語るのは、第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストだ。

「貿易が滞って生産が落ち込み、さらに消費も減退する悪循環に陥るリスクがある」(永濱氏)

 米国への対抗策として各国で高い輸入関税がかけられるようになると、モノの流通が減り、経済がうまく回らなくなる。経済が減速すれば当然ながら世界的な株価下落は避けられない。

「世論調査より株価を気にする」とされるトランプ氏のこと、NAFTA交渉でカナダなどが妥協すれば、輸入関税はあっさり引っ込めるかもしれない。だが、11月には中間選挙を控えており、トランプ氏率いる共和党陣営は苦戦が予想される。

「貿易や税、移民、外交問題についての全ての決断は、米国の労働者や家族の利益のためになされる」

 昨年の大統領就任式での演説をトランプ氏は忠実に実践しているようだ。(経済ジャーナリスト・大場宏明)

AERA 2018年3月19日号