田原:絶対セクハラをしなかったですね。女性にとって不愉快なことは言わない。

佐高:保守にしては珍しい、自民党のあぶらぎったオヤジは嫌いなんですよ。だからか、福島瑞穂さんや辛淑玉(シンスゴ)さんといった名うての女性たちが、意外に西部さんには好感をもっていました。それと、若い人に対して面倒見がよかった。本気でやる人には寛容でしたね。

 西部さんと半分自嘲的に笑ったんですが、東北に「舌屋(べろや)」という言葉がある。舌で商売をしている、農民からみると信用できない人という意味です。言論で勝負するというけれど、言論にそんな力はない。そこの無力感をかみしめてやるしかないというのはありましたね。

 天の邪鬼(じゃく)で顰蹙(ひんしゅく)を買うのが好き。同調圧力的に、「空気を読め」ということがあれば、その空気を自ら破る。破りながらの徒労感は、降り積もるように西部さんの中にあったのでしょう。

佐高:西部さんには北海道時代の同級生でヤクザの友だちがいて、そのルートを使ってピストルを手に入れようとしていました。「いいところまでいったのにダメだった」と、2回聞かされました。そういう意味では、わがままだけれども自分の自由のきかない人生は送りたくないと思っていらしたのかもしれません。

田原:自分でけりをつけたかったのでしょう。西部さんが亡くなって日本の強烈な個性がなくなった。非常に残念です。

(文中一部敬称略、構成/編集部・小柳暁子)

AERA 2018年2月26日号より抜粋