ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 世界同時暴落などと、どこかの新聞が書いていますが一体どうしてそうなるのか? 一番下がった5日のニューヨークの終値で、S&P500は年初来で見ると、たったの約0.9%安。翌日6日の東京証券取引所では日経平均株価が1千円以上落ち込む訳ですが、S&Pもこれまでかなり上昇してきたので桁が大きい。すごく下がった気がするのですが、パーセントでこんなもん。

 この0.9%を暴落だと呼んでいいのかどうか、ジャーナリストとしてよく考えてもらいたい。まあ、こちらは1987年のオクトーバークラッシュから2000年のテックバブル崩壊、さらに08年の金融恐慌まですべて経験済みなので、暴落というのはこの程度の話ではありません。

 まさに阿鼻叫喚、昨日までニューヨークヨットクラブでクルーザーを乗り回していた奴が突然夜逃げするとか、あり得ないことが連日起きるのが暴落なわけです。いまだに夜な夜なマンハッタンではシャンパーニュが売れまくっているような状況では、暴落もくそもありません。ましてや経済恐慌とか……。頭を冷やしてもらいたいものです。

 ちなみにS&P500指数で言いますと、00年のテックバブル崩壊の時は2年近くかけて1500台から800くらいまで下げました。企業業績もマクロデータも滅茶苦茶でそれこそどこで下げ止まるんだという状況でした。08年はまさに阿鼻叫喚。1500台から一気に600台まで下げたんですよ。半値、八掛け、そこから危うく2割引きになりかけた。ほとんどの金融機関は本当に倒産寸前までいったわけです。それと比べたら、2900台近くまで行ったインデックスがたかだか2600台まで下げただけで暴落とか書くなよという話ですよね。

 私は06年にはこれはまずいぞと警告を発しまして、金融機関の一つや二つは吹っ飛ぶぞ、と書きました。当時を思い返すと孤軍奮闘、だーれもあの08年の惨事が起きるなど思いもしていなかったのです。それに比べたら、今はなんてのどかな状況でしょうか……。

 若年労働人口がどんどん増え続けるアメリカでは、基本的に経済成長が続かないはずはないんです。実は00年にはこれが減少に転じており、放っておいても経済成長が鈍化した可能性が高かった。もう一度よくお考えになったほうがよろしいかと。

AERA 2018年2月19日号

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