竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
トラブル対応は『社会の常識で』(※写真はイメージ)トラブル対応は『社会の常識で』(※写真はイメージ)
「コンビニ百里の道をゆく」は、40代のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 みなさんは、仕事上のトラブルにどう対処していますか。その対応次第で、結果は大きく変わります。誤れば、自分のみならず会社全体の信用を失墜させる事態にもなりかねない。今回は、私なりのトラブル対処法をお話しします。

 三菱商事で広報部に在籍した5年間は、トラブル対応も重要な仕事でした。当事者の部局はともすると「大丈夫、何とかなる」と事態を楽観的にとらえがちですが、社会との窓口となる広報部員としては、トラブルは「会社の常識」ではなく「社会の常識」で考えることを意識していました。

 社内では通用することが、世間の常識とかけ離れていることは多々あります。その「社会の常識」でさえ、昨今は日々変化している。SNSで誰でも情報発信が可能になったいま、トラブルに際して会社の内向きな論理を振りかざしたり、何かを隠しだてしたりすることは、百害あって一利なし。「このトラブルはお客さまにとってどんな問題なのか」を把握し、「私たちは世間の常識とズレていないか」と自問しつつ、素早く対応します。

 問題が表沙汰になったほうがいいケースもあります。

 お客さまの健康被害が懸念される場合などには、自分たちが発信するだけではなくメディアも巻き込んで、できるだけ広く周知してもらったほうが影響を最小限に食い止められます。お客さまの安全を第一に考え、経済的な損失は完全に度外視して対応にあたります。社内から「そんなことまでするんですか」と言われるくらいでちょうどいいと思っています。

 SNSで意図しない発信がなされたときも、発信した本人にコンタクトする努力をして、なぜその情報を発信するに至ったかを聞いてみるべきでしょう。背景を知ることが社会との誠実なコミュニケーションにつながっていくと思います。

 どんなトラブルにも正々堂々と真正面から向き合う。それが結果的に、最大の「組織防衛」になると考えています。

AERA 2018年2月12日号

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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