寿司とパン、おにぎりとカップ麺…「主食重ね」は当たり前、異様な日本の食卓 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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寿司とパン、おにぎりとカップ麺…「主食重ね」は当たり前、異様な日本の食卓

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田沢竜次AERA#読書
岩村暢子(いわむら・のぶこ)/1953年、北海道生まれ。大正大学客員教授。キユーピー顧問。食と現代家族の調査・研究を続ける。『家族の勝手でしょ!』で、辻静雄食文化賞受賞。著書に『変わる家族 変わる食卓』『普通の家族がいちばん怖い』など(撮影/写真部・小原雄輝)

岩村暢子(いわむら・のぶこ)/1953年、北海道生まれ。大正大学客員教授。キユーピー顧問。食と現代家族の調査・研究を続ける。『家族の勝手でしょ!』で、辻静雄食文化賞受賞。著書に『変わる家族 変わる食卓』『普通の家族がいちばん怖い』など(撮影/写真部・小原雄輝)

 岩村暢子さんの最新作『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの食卓の今』は、日本の家族の食卓を長年にわたって調査・分析してきた軌跡をまとめた一冊だ。膨大な食卓写真の収集・分析や、インタビューを通して「和食」の変容とその驚くべき実態を描き出す。

 今、ニッポンの食卓はどうなっているのか? ご飯と味噌汁は必須のメニューではない。一汁三菜の意味が分からない。手巻き寿司に菓子パン、おにぎりにカップ麺といった「主食重ね」は当たり前。ペットボトルの麦茶で食事を流し込む。箸よりスプーン、茶碗は不要、マグカップで味噌汁。大人もお子様用プレート。ゴボウもタケノコもリンゴも硬いから嫌われる……。

 奇をてらって特異な例を挙げているわけではない。親が20代から50代までのごくごく平均的な家庭の例だ。ではどんな調査がなされたのか。

〈家庭の食卓を調査して、今年(2017年)で20年目になる。これまでに、413世帯、8673食卓を調べ、1万5611枚の食卓写真を収集・分析し、のべ700時間以上のインタビューを実施してきた〉(まえがきから)

 岩村暢子さんは気の遠くなるような数の調査・分析を積み重ねることにより、家庭における和食が変容(崩壊)してきた事実を明らかにした。

「『家庭の食卓がこんなにひどくなっている、だから和食を取り戻そう』ではありません。問題の本質はその理由なのです。それは今の50代半ば以下の世代が育った時代に関わってくる問題です」

 親が50代の家庭の食卓も、20〜30代とそれほど変わらないとは?

「1960年以降に生まれた人はインスタント食品などの加工食品が拡大する時代に育ちました。70年はファストフード元年と呼ばれています。育児の考え方も『我慢させない、子どもの意志を尊重』に変わったのです。さらに家庭科教育から実習時間が減らされ、家庭で子どもが炊事を手伝うことが減っていきます」

 家庭料理が変容する契機は既に半世紀以上も前に始まっていた。今日の現実はまさに歴史的必然だという。それどころか、時の政府も政策として積極的に推進した結果なのだというから驚く。

「60年以降の方針は(料理を)つくる教育から消費者教育にシフトします。今でこそ手抜きといわれることも食の合理化と高度化として推進されてきたわけです。そんな家族と食の関係、生活の変容を無視して和食の復権を説いたり、料理の知識をつければ変わると思うのはお門違いです」

 異様な食卓の光景は教育がもたらした現実を照らし出す。調査は現在も継続中。岩村さんの執念が結実したアナログデータから見えてくるものは、この国の家族のありようであり暗澹たる未来である。(ライター・田沢竜次)

AERA 2018年2月5日号


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