キリンの研究風景(写真:キリン提供)
キリンの研究風景(写真:キリン提供)
プラズマ乳酸菌はラクトコッカスと呼ばれる球状の小さな菌(写真:キリン提供)
プラズマ乳酸菌はラクトコッカスと呼ばれる球状の小さな菌(写真:キリン提供)
こんなにもある!菌アピール商品(AERA 2018年1月29日号より)
こんなにもある!菌アピール商品(AERA 2018年1月29日号より)

 乳酸菌を使った商品開発で各社がしのぎを削っている。機能性ヨーグルトと呼ばれる市場の活況を筆頭に、いまや乳酸菌配合のチョコレートやポテトチップスまで店頭に並ぶ時代だ。乳酸菌は乳酸を作り出す菌の総称だが、どの種類の、さらにどの菌株を利用するかで作用も異なる。ヒット商品を生み出した企業が目をつけた乳酸菌は、一体どんな菌だったのか。

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 前述のポテトチップスに含まれているのは「プラズマ乳酸菌」。キリンが複数の研究機関と共同研究したもので、ヨーグルトなどの「iMUSE」(イミューズ)ブランドでも展開する菌だ。

 一般的に乳酸菌はナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させるといい、これが免疫力アップに効くことが分かっている。一方、プラズマ乳酸菌が働きかける先は、NK細胞のいわば親分、司令塔とみられるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)だ。キリン事業創造部の藤原大介さんが説明する。

「血液の中にウイルス感染を見張る細胞がいて、感染を見つけたら“働きアリ”の免疫細胞たちにウイルスを排除しろと指示を出す。この設計図が明らかになったのは2004年ごろです」

 その親分を活性化させる乳酸菌を探せないか。そこから同社のプロジェクトが始まった。世界中からさまざまな乳酸菌を取り寄せ、スクリーニングした結果発見されたのがLactococcuslactis JCM 5805だ。1900年代初頭に、デンマークの博士が酸乳という飲み物から分離した菌株で、研究用素材として広まってはいたが、その健康機能の解明は手つかず。pDCを活性化できる乳酸菌だったため、同社がプラズマ乳酸菌と名付けた。

 これを活性化するのに、菌が生きて腸に届く必要がないのも特徴だ。プラズマ乳酸菌は生きていても死菌でも作用する。というのも、生きた菌が腸の中で腸内環境を改善する仕組みとは全く別のメカニズムだからだ。

「腸管の粘膜に住んでいるpDCがプラズマ乳酸菌を取り込むと、プラズマ乳酸菌のDNAが溶出します。このDNAに活性化スイッチをオンにする作用があるので、DNAさえ届けば菌は生きていても死んでいても関係ないんです」(藤原さん)

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