前日に沖縄県読谷村に不時着した米軍のヘリが離陸した (c)朝日新聞社
前日に沖縄県読谷村に不時着した米軍のヘリが離陸した (c)朝日新聞社
同県うるま市の伊計島に不時着した米軍ヘリから回転翼を外す米軍関係者 (c)朝日新聞社
同県うるま市の伊計島に不時着した米軍ヘリから回転翼を外す米軍関係者 (c)朝日新聞社

 沖縄で米軍機のトラブルが頻発している。在日米軍の「劣化」が住民の命を危険にさらす事態にもかかわらず、日本政府の対応は及び腰に映る。その背景に何があるのか。

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「軍上層部は『北朝鮮対応のため』とは決して口に出しませんが、それ以外には考えられない早いペースで訓練を消化しているように映ります。兵士たちは暗黙の了解で、『有事』が近い可能性を予感しています」

 米軍と長年交流してきた沖縄のメディア関係者は、淡々とした口調でこう打ち明けた。

 沖縄を含む在日米軍の兵士たちは、実戦に向けた資格取得のため部隊ごとに定められた年間の訓練スケジュールをこなしている。「変化」が感じられるようになったのは、昨年後半以降のことだという。米空軍や米海兵隊の内部で即応態勢の維持に必要な訓練が前倒しで実施されているのではないか、というのだ。

 同関係者はさらにこう訴えた。

「予算削減に伴う『蓄積した疲労』に加え、常に北朝鮮情勢に備えておかなければならない緊張感で、一部の兵士たちは確実に疲弊しています」

 在日米軍司令部(米軍横田基地)は本誌の取材に対し、訓練のタイミングや頻度、内容について「任務の必須要綱、軍の規定、訓練規定、そして日米合意事項を遂行するためにさまざまな要素を含んでいます」と回答。そのうえで、「在日米軍は運用効果と安全性の両方を優先事項としながら訓練を実施しています」と強調した。

 ただ、米軍内部に「疲労」や「疲弊」が蓄積しているのだとすれば、それが在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄で顕在化している可能性も否定できない。沖縄で相次いでいる米軍機の事故やトラブルをざっと振り返ろう。

 1月8日、沖縄県読谷村にある廃棄物処分場に、米軍普天間飛行場所属のAH1攻撃ヘリが「緊急着陸」した。約300メートル先には、1千人以上が宿泊できるリゾートホテルや住宅があった。

 あわや、と思わせるトラブルは2日前にも起きたばかりだった。1月6日、うるま市伊計(いけい)島の海岸の、住宅地から100メートルほど離れた場所に、同飛行場所属のUH1ヘリが「緊急着陸」した。

 伊計島には2017年1月にも、読谷村で今回のトラブルを起こしたAH1が不時着している。同10月には、東村(ひがしそん)高江の民有地に普天間飛行場のCH53E大型ヘリが不時着、炎上。CH53Eは同12月にも、宜野湾市の普天間第二小学校の校庭に重さ8キロ近い窓を落下させた。これらはいずれも米海兵隊の所属機だ。

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