米海兵隊が、かたくなに関与を否定している「事故」もある。普天間第二小の事故の6日前、CH53Eは宜野湾市の緑ケ丘保育園のトタン屋根に円筒状の部品を落下させた、と保育園関係者らが被害を訴えた。これに対し米軍側は、屋根の上で見つかった落下物がCH53Eの部品であることは認めたが、「飛行前に取り外し、過不足なくそろっている」などとして、「飛行中に落下した可能性は低い」と発表した。

 米軍側の否定的態度を受けて、緑ケ丘保育園には多くの誹謗(ひぼう)中傷の電話とメールが届くようになった。事故からひと月以上たつ現在も、「自作自演」などと園側をなじる中傷行為はやまず、被害者を何重にも苦しめている。ちなみに、保守系米メディアの「FOXニュース」は17年12月13日、米海兵隊ヘリが緑ケ丘保育園と普天間第二小に相次いで部品を落下させたと、二つの事件を並べて報じている。

 こうした米軍の相次ぐ事故やトラブルの背景に浮かぶのは、米国のトランプ政権の軍事戦略だ。
 
09年から8年間続いたオバマ前政権が国防予算を削減する方針をとったため、10年7月には予備役と文民をのぞいて142万1414人いた米軍兵力数は、16年会計年度末までに130万1300人まで削減された。これに対して、トランプ政権は17年12月末現在、18年会計年度予算における国防予算の上限引き上げと大幅増大を議会に要求している。

だが、オバマ政権が予算管理法で定めた国防予算の強制削減措置が続いているため、17年会計年度末の米軍兵力数は前年から4400人減少した。

「テロとの戦いを終わらせる」と主張するトランプ政権は予算や兵力の手当てがないまま、中東での「テロとの戦い」への軍事展開に加え、北朝鮮への軍事対応も視野に入れている。その最前線に立たされているのが米海兵隊だ。

 米海兵隊は17年1月ごろから、イラクやシリアの過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦に参加。同年10月にはIS占領地域の「首都」が陥落したが、戦闘はいまだ継続中だ。また、トランプ大統領が8月にアフガニスタンへの米軍駐留の継続を決定したのを受け、今度は米海兵隊を含めた3千人の増派部隊がアフガニスタンに派遣された。

 予算や兵力が確保される前に軍事作戦を拡大させているトランプ政権の世界戦略のひずみが、日本国内、とりわけ沖縄での米軍機の事故やトラブルの頻発という形で現れている側面もあるのではないか。(沖縄国際大学非常勤講師・山本章子、編集部・渡辺豪)

AERA 2018年1月22日号より抜粋