SBI証券 投資調査部外国株担当 榮聡さん(54)/大手証券・大手投信会社で企業調査、ファンドマネジャーなどを経験後、2015年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。米国経営学修士(撮影/森田悦子)
SBI証券 投資調査部外国株担当 榮聡さん(54)/大手証券・大手投信会社で企業調査、ファンドマネジャーなどを経験後、2015年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。米国経営学修士(撮影/森田悦子)
日経平均・NYダウ・円建てNYダウのパフォーマンス比較(AERA 2017年12月18日号より)
日経平均・NYダウ・円建てNYダウのパフォーマンス比較(AERA 2017年12月18日号より)

 アメリカ株は、株価そのものも安定した右肩上がりを続けている。日経平均株価は28年前のバブル相場の水準をいまだに回復していないのに対し、アメリカ株はリーマン・ショック時の暴落から3年で回復し、今も史上最高値を更新中だ。

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 この背景について、SBI証券投資調査部の榮聡さんはこう解説する。

「アメリカ経済や企業業績が好調なことに加え、アメリカの株式市場は年金基金や個人の確定拠出年金など長期保有を前提とした資金の占める割合が高く、追加資金も安定して流入しています。このため日本と比べても短期的な変動が少なく、値動きが安定している傾向があります」

 もうひとつ、アメリカ株の魅力として、前出の尾藤さんは不正行為に対する罰則が厳しいことを挙げる。

「日本でも企業不祥事の発覚が相次ぎ、株価も乱高下していますが、アメリカでは不正への罰金がケタ違いに高額です」

 たとえば、15年に発覚したフォルクスワーゲンの排ガス不正操作では、同社は連邦政府などに対し、147億ドル(約1兆5千億円)もの支払いに合意させられている。こうした巨額の制裁金が強い抑止力となり、株価下落の要因となる不祥事が比較的少ないのだという。

 しかし、史上最高値の更新を続けているアメリカの株式市場はバブルではないのか? アメリカの景気拡張はもう9年続いており、タイミングとしてはいつ下落に転じてもおかしくないようにも思える。今から投資して「高値づかみ」になる心配はないのか。こうした見方に対して榮さんはこう分析する。

「日本人はバブルを基準にすれば下落相場しか経験していないことになるので、『高い時に買ってはいけない』という逆張り思想が根付いています。しかし、本来投資は『上昇しているから買う』という順張りがオーソドックスな考え方です」(榮さん)

 アメリカ株投資に詳しい資産運用アドバイザーの尾藤峰男さんは、市場の変動を10年単位で振り返ると、見える景色が変わってくると話す。

「70年代のNYダウは横ばいでしたが、80年代と90年代の20年で13.7倍になりました。その後00年代はリーマン・ショックで下落基調、その後10年から現在までの上昇は2.3倍。30年までに過去と同様な上昇を示すとすれば、まだ初動ということになります」

 ただし、投資にはリスクがつきものだ。まず、どこの国の株であっても下落局面はあるし、投資した直後にリーマン・ショックのような大きな金融危機が起これば短期的には大きな損失を被ることになる。

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