さらにアメリカ株の場合、値下がりリスクに加え、為替リスクが伴うのだ。

 買った株が値上がりしても、ドル円相場が円高にふれると利益が帳消しになることも。株価下落と円高が同時に起これば損失が膨らむことも考えられる。こうしたリスクに対し、尾藤さんは長期で保有すれば、配当や値上がり益で吸収できる可能性は高いとアドバイスする。

「アメリカ株投資の醍醐味は、長期で配当を受け取りながら、じっくり値上がりを待てる点にあります。目的はあくまで株への投資であり、為替のゲームに参加する必要はないのです。円が高いときに買ったほうが有利などと考え始めると、買い時がわからなくなってしまいます」

 株価の値下がりに対しても、一喜一憂は禁物だという。

「業績が極端に悪化したり、配当がなくなったりなど、投資対象としての魅力がなくなってしまった場合は売却もやむを得ませんが、景気や相場環境に引きずられて下落しているようなときにアタフタしないこと。5年、10年の長期投資のスタンスで臨むことが重要です」(尾藤さん)

 では、具体的に何を買えばいいのだろうか。尾藤さんも榮さんも、あまり難しく考える必要はないとアドバイスする。英語が堪能な人なら話は別だが、日本の企業に比べるとアメリカの企業情報は取得しにくい。「掘り出し物」を探そうとするよりも、優良グローバル企業や長く増配を続ける企業など複数銘柄に投資するといいという。

「グローバル企業なら日本や新興国など世界中でビジネスをしているので、実質的に世界経済全体の成長を取り込めます。NYダウに採用されている30銘柄は大型優良株が選別されているので、ここから選んでもいいでしょう」(榮さん)

 アメリカ株は日本の証券会社から簡単に投資できる。まず、アメリカ株を扱う証券会社で専用口座を開設しよう。取引手数料のほか、ドル建ての取引となるので、円からドルに両替する両替手数料も必要となる。

「まずは手数料の安いネット証券が有利ですが、個別の対応や充実した銘柄レポートを求めるなら店舗のある対面証券もいいでしょう」(尾藤さん)

 どうせ投資するならスケールの大きいグローバル企業を選ぶのも夢がありそうだ。(ライター・森田悦子)

AERA 2017年12月18日号より抜粋