90年代に全盛期を迎えたCDセールスは、2000年代に入って縮小。ワーナーミュージックのCEOに就任した彼は、いち早くデジタル配信への転換を推し進めた。

「音楽業界はデジタル時代への準備ができず、過去にしがみつこうとしていた。でも私は、常に変わらなければいけないと考えていました」

 昨年秋には「世界最大の企業の一つであるGoogle、YouTubeと音楽業界との橋渡しをしたい」と現職に転身。だが、Spotifyなどの定額制音楽配信サービスが普及し、デジタル分野の収益が世界的に拡大するいま、YouTubeはレコード会社やアーティストから敵視される存在でもある。

「YouTubeは、音楽業界にとって宣伝の場、広告収入を得る場であり、多くの人にとっては音楽との出合いの場だ。今後、広告モデルと定額配信サービスが音楽業界の成長を支えるものになる。音楽をもっと楽しみたい人が定額配信に移行するモデルを確立したい」

 コーエン曰く、「変化は常にエキサイティング」。そう語る不敵な笑顔には、数々のスターを生み出してきた自信が垣間見えた。(ライター・柴那典)

AERA 2017年12月11日号