先ほどのP&Gでは最終的に、マーケティング予算はデジタルメディア向けと従来メディア向けで半々になるでしょう。「認知」「訴求」の段階では、どちらのメディアも必要だからです。

 つまり、「4.0」の本質は、オンライン(デジタル世界)とオフライン(現実世界)の統合。これによって、企業は最大の価値を生みだします。米百貨店メイシーズでは、店舗とスマホのアプリを両方とも使う顧客は、店舗のみを利用する平均的な顧客と比べて商品の購入額が6倍にのぼると判明しました。

 もうひとつ、米アマゾン・ドット・コムの例もあります。現実の店舗網を強化するのに食品スーパーの米ホールフーズを買収しました。今年の感謝祭には、ホールフーズの店頭でAI(人工知能)搭載スピーカー「エコー」を販売。声で指示するだけで買い物ができる製品です。これでアマゾンは店舗、オンライン、音声という買い物の主な選択肢すべてを手中に収めました。

 ここにきて、企業が社会的責任を果たすように求めた「3.0」も重要になってきました。

 企業が経済的な利益を分配する際に、投資家ではなく従業員や取引先を重視する動きが盛んになったからです。利益を経営者や投資家が吸い上げるだけではなく、従業員や取引先に流さなければ、消費者が購買力を失ってしまいます。

 貧しい消費者が増える経済システムは時限爆弾のようなもの。従業員や取引先も含めた利害関係者全体が利益を共有する資本主義への転換が求められます。そうなれば、「4.0」と「3.0」以前の理論が相乗効果を発揮して、「2+2=5」が実現できるのです。

(編集部・江畠俊彦)

AERA 2017年12月11日号