店舗の入り口や窓などの開口部に目を光らせる四つの防犯カメラ。カメラだらけの様子はロンドンでは日常風景になっている(撮影/青木陽子)
店舗の入り口や窓などの開口部に目を光らせる四つの防犯カメラ。カメラだらけの様子はロンドンでは日常風景になっている(撮影/青木陽子)

 市民1人当たりの防犯・監視カメラの数が先進国で最も多いと言われる英国。公共交通機関や警察など公的な組織が運用するものが10万台、店舗やオフィスビル、個人の住宅など私的に設置されているものは600万台にのぼると推測されている。人口860万の首都ロンドンには、そのおよそ3分の1が集中しているという。大まかな計算だが、市民4人にカメラ1台だ。

 防犯カメラが英国でいち早く広がった理由としては、1980~90年代にかけて猛威をふるったIRAによるテロの影響が大きい。階級社会ゆずりの格差社会で「持たざる者」となった若者などによる器物損壊や窃盗、迷惑行為が多く、残念ながら道行く人を怪しむ風潮もややある。

 2005年に起きたロンドンの同時爆破テロがカメラの普及を後押し。私の記憶では、公共スペースでの防犯カメラの普及に用心を呼びかける声が急速に小さくなったのもその頃だ。今日も電車に乗れば、一つの車両に3、4カ所、赤い2階建てバス車内は4、5カ所、駅の改札やホームには数カ所ずつ、学校の入り口もという調子でカメラに見つめられる毎日だ。道を歩いてふと視線を上げると、街灯のように立っているカメラのレンズと目が合うこともある。

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