10月13日に記者会見した神鋼の川崎博也会長兼社長(右)。川崎氏が社内の調査委員長に就く予定だったが、それに代えて外部の調査委員会を設置することになった (c)朝日新聞社
10月13日に記者会見した神鋼の川崎博也会長兼社長(右)。川崎氏が社内の調査委員長に就く予定だったが、それに代えて外部の調査委員会を設置することになった (c)朝日新聞社

 取引先は国内外500社。神戸製鋼から納入された製品が契約を守っていないとわかった。自動車、鉄道、航空機……。影響は多方面に及ぶ。まだ安心できないようだ。

 そのメーカーには9月下旬、一報が入った。

「弊社の製品に問題があります」

 そう告げたのは神戸製鋼所だ。

「御社との契約に適合しない製品を納めたと判明しました」

 社内は大騒動になった。神鋼の製品を疑った経験がなかったからだ。定期的に一部を抜き取って、目視で表面に傷がないか、超音波装置で内部に問題がないかを確認するだけだった。

 契約に適合しないのは、どの製品か。納入開始はいつか。順次届く回答で特定できた製品から調査に取りかかった。

 10月8日になって、

「記者会見をやっているぞ」

 ある事業部は知らなかった。別の事業部に連絡すると、

「神鋼さんから事前に聞いたよ」

 どちらの事業部も神鋼の同じ工場から仕入れていたが、神鋼は片方に伝えなかったようだ。

「まさに混乱だ。大丈夫かな」

 神鋼は、この記者会見で昨年9月~今年8月に出荷したアルミニウムや銅製品の一部で、納入先との契約に適合したように強度や寸法などのデータを改竄していたと発表。管理職を含む数十人が関与するなど組織ぐるみだった。加えて11日には鉄粉や合金(ターゲット材)、13日には銅管をはじめ9件、20日には1件の改竄を発表した。すでに納入先との間で問題を解決した4件も含まれる。改竄が10年以上にわたる製品もあった。

 問題解決の4件を合わせて、出荷先は国内外500社に達する。自動車、自動車部品、航空機、重機、鉄道、造船、電機……と、業種も幅広い。安全性に疑いが生じれば、重大事故を避けるのに一刻も早く改修を迫られる製品も含まれる。信用調査会社・東京商工リサーチによると、改竄に関与した神鋼グループの国内7社の販売相手は産業機械や鉄鋼の商社、自動車部品など583社。それらの会社が加工などして販売する先は2689社にのぼる。

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