「エコーという名前の通り、自分が何かを発して、反射して戻ってきたもので、空間を認知する。そんな体験型展示をすることになりました」(真鍋さん)

 具体的には、対象との距離を測るセンサーと、その測定結果で瞬時に振動パターンが変わる振動装置を制作。これを取り付けたウェアを実際に着た来場客が空間内を歩き回り、視覚、聴覚とはまた違った「振動」で、空間を感じてもらうインスタレーション。来場客が歩き回る空間も、振動としてどう伝わるかを計算したうえで設計した。

ファッションは、何より美しさが重視される。見かけは美しいけれど、振動で感じたらどうなのか。視覚じゃない美しさが感じられる空間を体験してほしいですね」(森永さん)

 きっかけは、檜山さんとライゾマがコラボした、リオのパラリンピック閉会式だった。「目が見えない方の世界はどんなものか」と興味を持つようになった真鍋さんが、「意外な素材を見つけてくることにかけては天才」という森永さんらを交えてプロジェクトを始動。檜山さんと対話し、装置のプロトタイプを試してもらうなどしながら、プロジェクトが進められていったという。

●健常者が持たない感覚

「ときには真っ暗ななかでミーティングをしたことも。空間認知の感覚など、目の見えない人は、自分たちが持っていない優れた感覚を持っている。彼らだけが感じることができるもうひとつの世界を、来場客にも体験してもらう作品ですね」(真鍋さん)

 目指すのは、「アートプロジェクトを通して目の見えない人が自由に、安全に、街を歩ける将来を、みんなが想像するような」(同)プロジェクト。

 体験は、数に限りがあるものの、当日登録で参加できる。また空間内では、ウェアの実物も展示。日常生活のすぐ隣にある、「見たことのない」世界の存在を感じに、出かけよう。

(ライター・福光恵)

AERA 2017年10月9日号