新宿・歌舞伎町でホームレスを占った時のことです。2、3年前がいいと出たので、「2、3年前めっちゃよかったですね」と言ったら、「いいわけねえだろ!」。そりゃそうだなと。けれど、しばらく話していたら、「2、3年前は○○さんがいたから、確かによかったな」と、仲間の思い出を話してくれました。別の日に、西麻布のビルを何棟も持つ大金持ちを占ったら、「つらいです」と言うんですよ。つまり、運気は万人に共通する指標があるわけではなく、その人の欲望と満足度です。

●勝ち続ける人生はない

 ぼく自身は、実験も兼ねて占い通りに生きすぎたのか、いいとも悪いとも思わなくなりました。いまは「多少運が悪いほうが、結果的に運がよくなる」と思っています。皆よいところだけを伸ばそうとしがちですが、悪いところも知って伸ばさなければ、成長はありません。

 成功した人は皆苦労していて、「この時期よかったですね」と言っても、「よくないよ、何も学ぶことがなかった」と返ってくる。悪い時の努力の積み重ねなくしてよいことはないんですね。

 確かに、生まれつきの運の量は違います。数字で例えれば、運を90持って生まれる人も、5しかない人もいて、20努力すれば前者は100を超えますが、5の人は25です。だけど、運は饅頭の薄皮のようなもの。ぼくの占いでは、大リーガーのイチロー選手は生まれつき持っている運は低く、ほぼ努力で成功した人です。中身は自分で詰めないと。世の中は不平等で、だからこそ、ひっくり返せるんです。

 エンタメ感覚で使っている人は多いと思いますが、占いはあまり本気にならないほうがいいですよ。「何がしたい」という芯がなければ、振り回されてしまう。耳の痛いことを無視するなら、見ないほうがいい。目標に至るまでのアドバイスと向き合わず、同じ失敗を繰り返す人は好かれませんし、うまくいきませんよね。占いは当たる、当たらないではなくて、「うまくいく」きっかけとコツを伝えるツールです。「占いはいい言葉だけ信じます」は一番お勧めしません。

 しょせんは人間、しょせんは占いです。勝ち続ける人生はない。ダメな時期はうまく避けて譲る。その目安になれば、十分です。(談)

(構成/編集部・澤志保)

AERA 2017年10月2日号