小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

*  *  *

 秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんのご婚約。会見を見ながら、思わず「もしも息子が、皇族結婚したら」と想像してしまった母親は少なくないでしょう。やんごとない皆さまとお近づきになれるなんて素敵!と思うのか、いろんな意味でハードル高すぎ……と思うのか。

「もしも娘が、海の王子と結婚したら」と想像した人もいるはずです。母親を大切にする男性は、もちろん優しくて真面目な人なのでしょうが、嫁姑問題が起きたら……と、いらぬ心配も。

「もしもお隣に元プリンセスが引っ越してきたら」はどうでしょう。壁の厚さにもよりますが、夫婦喧嘩の言葉遣いが自然と丁寧になりそうです。「もしもスーパーで、元プリンセスのお買い物のレジ打ちをすることになったら」。畏れ多くも今日の献立に興味津々です。

 実は私が中学生の時に、3学年上に紀宮さま(黒田清子さん)が在学していました。みんな慣れているとはいえ、校内でお見かけすると「サーヤが中庭でバスケのシュート決めてた!」「売店で蒸しパン買ってた!」などとささやきあったものです。

 すでに電車移動やボランティアなどで市井の生活をご存じの眞子さまですが、文春砲とSNSの時代に新生活を始められるのはさぞかし不安なことでしょう。将来は皇籍を離れることを前提に生活してきたのだとしても、初めて皇族ではない自分を生きるのですから、多かれ少なかれアイデンティティークライシスを経験されるはず。

 眞子さまが「小室眞子さん」になるのも幸せなのだと思います。でも、皇族がご自分なりの人生と、公務というキャリアを両立できる形があればいいのに、とも思うのです。

 皇后陛下の「皇室は祈りでありたい」というお言葉、昨夏の天皇陛下の「個人として考えてきたこと」というお言葉。その重みを、今改めて感じています。

AERA 2017年9月18日号

著者プロフィールを見る
小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

小島慶子の記事一覧はこちら