しかもダウンロードせずその場で曲を聴くだけなら、無料でどんどん作ってくれる太っ腹ぶり。この先、さらにAIが作曲の腕を磨けば、「聴きたい曲を探すのが面倒だからいっそ作ろう」みたいな人も増えそうだ。

 多くのCM曲やアニメ主題歌などを手がける作曲家の外山和彦氏は言う。

「作曲は作り手からの提案なんですね。そして回答するのはAIではなく人間です。AIが作ろうが、聴き手にとっては、優れた曲に出合えるチャンスは増える。楽しみですよね」

 それどころか、こんなAIの開発も進んでいる。大阪大学Center of Innovation(COI)拠点はこの1月、「楽曲に対する脳の反応に基づいて自動作曲を行う人工知能の開発」に成功したと発表した。

●脳波にあわせアガる曲

 各種音楽を聴かせたときの脳の反応を、ヘッドホンと一体化した脳波センサーがキャッチ。その人の脳がもっとも活性化する曲の傾向を分析し、その結果から、脳が活性化する曲をその場で作曲してしまおう。要はそんな研究だという。

 AIを使った作曲サイトのなかには、わずか数クリック、数タップでカンタンに曲作りができるサイトも多いが、この仕組みが実用化すれば、その設定の手間さえ不要に。

 この研究をおこなっている大阪大学産業科学研究所の沼尾正行教授は言う。

「手持ちのCDや音源を聴く代わりに、脳波から分析した最適な音楽を作って提供する。そんな日を目指して開発中です」

 脳波センサー入りのヘッドホンをつけるだけで、その人にとってベストな音楽を“作りたて”ですぐさま提供。AIがそんな、私だけのお抱え作曲家を務める日も近いらしい。

 最後に、オヤジバンド歴が半世紀近くに及ぶ夫に、「Jukedeck」で作った、オリジナル楽曲を聴かせてみた。

「いや、これ裏で人がやってるだろ、絶対そう!」

 う、うん。そうかもね。

 ところで、夫が作曲した作品を何曲か聴いたことがあるが、どれも山本コウタローの「岬めぐり」にしか聞こえない。(ライター・福光恵)

AERA 2017年9月4日号