何やら聴き慣れぬ音色が近づいてくる。奏者の姿は見えない。正体は、新たな展開をみせているAI(人工知能)。人間と協調して演奏し、わずか数十秒で作曲もするとか。AERA 9月4日号ではAI時代の音楽を見通すアーティストや動きを大特集。人間と音楽、そしてAIのトリオが奏でる曲とは、一体何かを探る。
最近では、AIがオリジナル曲を作曲してくれるサイトもあるという。さっそく試してみると、驚きの結果が……。
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天才作曲家たちが、口を揃えて言う「天から曲が降ってくる」という感覚。最近は、天才じゃない人たちも、味わえるようになっている。ここ数年のネットには、AIが好みに合った曲をその場で作曲してくれるサイトが次々登場。AIに作ってもらったオリジナル曲を、自作の動画やゲームなどのBGMに流す人も増えている。
というわけで、まずはそのAI作曲なるものを試してみる。
いろいろある作曲サービスの中から選んだのは、ケンブリッジ大学出身のAI研究者や音楽家らが運営する英語のサイト「Jukedeck」。
●数十秒待つだけで完成
作りたい曲のジャンルや曲調、長さ、盛り上がりのタイミングなどを設定してボタンを押せば、あとは数十秒待つだけ。作曲のイロハを勉強中のAIが、即興で、それらしいタイトル付きの一曲を作ってくれる。
暑いし、太るし、仕事はピンチだし。ここは、どんよりしている自分を励まそうと、ジャンルは「ポップ」、曲調は「高揚する」を選んでみた。
そうしてドキドキしながら「再生」ボタンをクリックすると……北朝鮮の行進曲みたいなものができあがるのではと、見くびって、ごめん。スローテンポなのにアガる、何やらセンスのいいインストゥルメンタル曲ができたじゃないの。ひー、カッコいい……。
このまんまネットで売っても、誰か間違って買いそうなレベル。そんな需要を意識してか、このサービスでは作った曲のロイヤルティーもシンプルだ。クレジットを表記すれば、無料での使用も可能で、199ドルを払えば曲の権利を買い取って、販売もできてしまう。