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『アラベスク』作者・山岸凉子「ノンナのモデル、実は私です」

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バレエは人間がその身体をもって描く極限の芸術だ(※写真はイメージ)

バレエは人間がその身体をもって描く極限の芸術だ(※写真はイメージ)

 バレエ漫画『アラベスク』作者の山岸涼子さんに、作品についてお話を聞いた。

*  *  *
 バレエは人間がその身体をもって描く極限の芸術です。ダ・ヴィンチが描いたデッサンのように、体の中心軸を定め、そこからすべての筋肉を使って、外側に開いていく。限界を極めた時に、美しいポーズが決まるのです。絵を描くとよく分かるのですが、片足ポワント(爪先)でポーズをとる時、ダンサーは体のあらゆるインナーマッスルをとらえています。

 1970年代に描いた『アラベスク』(第1部・第2部)の舞台は同時代のソ連です。なぜ、その設定にしたかというと、ボリショイとマリインスキーという、世界最高峰のバレエ団があったからです。日本にも森下洋子さん、深川秀夫さんという世界水準のダンサーが登場していましたが、物語を膨らませていく脇の層が、当時はまだ厚くなかった。ビデオやユーチューブもありませんでした。

 連載開始早々に、ボリショイ劇場までバレエを観に行きました。外国人旅行者には通訳という名の見張りが付く時代でしたが、赤いビロードの絨毯に金ピカの椅子は、まさしく「お城」。クロークやボックス席にいちいち感動して、「これが観劇ということなのね!」と、同行の萩尾望都さんと騒いでいました。

 連載当時は資料も限られていたので、ボリショイの来日公演のプログラムは熟読しました。批評家の解説の一語から、想像を膨らませていくのです。作品では、実在の名ダンサーの名前を、主人公の先生に使わせてもらったりしましたが、では、主人公、ノンナ・ペトロワのモデルは誰か? 実は私なのです。

 ノンナの本質は、ヘタレで自信のない女の子。いじいじとした子が、押し寄せる苦難に右往左往しながら、バレエ芸術の高みに到達する──そんな理想を、異国を舞台にしたファンタジーに託したのです。でも、ロシアバレエの厳しい現場を知った今、あんなヘタレでは大成しません、と断言できますね(笑)。(談)

AERA 2017年8月14-21日号


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