主役のビールにも変化の兆しが現れた。カシハラさんは言う。

「一番のトピックは、海外産や地ビールなど、(小規模醸造の)クラフトビールが飲めるビアガーデンが増えたことです」

 クラフトビールは単価が高いため、提供するビアガーデンは昨年まで数えるほどだった。ところが、今年は飲み放題に取り入れる店も目立つ。ビール大手5社によると、ビール類の上半期出荷量は5年連続で落ち込んでいるが、クラフトビールはここ数年順調に増えている。

●予約なしでは入れない

 ビール大手・キリンも力を入れており、同社の広報担当も「今年から11種類のクラフトビールから選べるサーバーの提供をはじめ、すでに首都圏500台。年内に1千台に到達する見込みです」と話す。

 喉越しがよい日本のビールは、「夏の屋外で飲むのにぴったり」(カシハラさん)というが、味わい深さやバラエティーを求める層も増えている。

 出店スタイルも多彩になった。カシハラさんによると、さっぽろ大通ビアガーデンは、大通公園が丸ごと会場の日本最大級のビアガーデン。京都の「祇をん 新門荘」は舞妓さんが付く。名古屋の「マイアミビアガーデン」にはビアガーデンアイドルがいて、整理券が配布されるほどの人気だとか。

 一方で、切ない事態もある。

 今春に「キリンビール大学」が実施したインターネット調査によると、今夏、ビアガーデンに行きたいと答えた人は92.1%で、5年連続で9割を超えた。

「人気が過熱し、予約なしで入れるビアガーデンはほとんどなくなってしまいました。会社帰りに団体でふらりと立ち寄れる場ではなくなった。どうしても行きたい場合は、一人席のあるビアガーデンもいくつかあります」(カシハラさん)

●気軽なスタンド飲みも

 賑わうビアガーデンで一人飲むには修業が足りない。まずは同僚と気軽に飲めないものか。

 ある金曜日の昼すぎ、有志が電話を入れてみたが、都内は軒並み満席。予約なしで入れるところはほぼない。ビアガーデン人口はいつの間に膨らんだのか。気軽に、ビール片手に開放感を味わいたい。そんな人々はどこへ行けばいいのか。

 東京・丸の内の新丸ビル1階のビアスタンド「STAND T」は、テラス席の眼前には東京駅やビル群を望む。18時をまわる頃から来店客が増えてきた。店長の岸川洋之さんは、「立地柄、外資系企業の方や近隣の会社員がよく来店します。テラスはテーブル席よりもスタンド席が早く埋まります」という。

 この日、会社の先輩たちと18時ごろに来店した20代の女性会社員は言った。

「暮れていく空を見ながら飲むのが、風情があっていいんですよね。先輩たちに連れてきてもらって、スタンドで飲むのもいいなと思うようになりました」

 思い思いのビールを掲げ、乾杯で泡が弾け、笑い声も飛ぶ。その傍らを通るだけで、なんだか無性に飲みたくなってきた。

 テラスでもいい。スタンドでもいい。一人だって、いいかもしれない。街に出て、ビアガーデンに行こう。(編集部・澤志保)

AERA 2017年8月7日号