雑誌こそ極上の娯楽だった(※写真はイメージ)
雑誌こそ極上の娯楽だった(※写真はイメージ)

 子どもの頃読んで忘れられない本、学生時代に影響を受けた本、社会人として共鳴した本……。本との出会い・つきあい方は人それぞれ。各界で活躍する方々に、自身の人生の読書遍歴を振り返っていただくAERAの「読書days」。今回は、ライターの戸部田誠さんです。

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 学生時代は雑誌ばかり読んでいた。「Quick Japan」や「STUDIO VOICE」「広告批評」や「TV Bros.」

 ……そうした雑誌から得る知識が僕のカルチャーのすべてだと言っても過言ではない。様々なことが1冊にまとまっているから、全然興味のなかったものを知る雑誌ならではの悦びもあった。

 一方で、専門誌と呼ばれる雑誌も好きだった。中でも熱中したのが「週刊プロレス」や「格闘技通信」だ。発売日になると、待ちきれず早朝、というか深夜のコンビニに今か今かと待機する迷惑な客だった。

 そんな雑誌を買っているのだから、僕は当然プロレス・格闘技ファン。だけど、より正確に言うならば、「プロレス・格闘技雑誌ファン」だった。試合そのものを観るよりも、雑誌に綴られた試合レポートに心躍った。

 問題提起をするコラムに思考を巡らせ、選手のインタビューで彼らのことを好きになった。雑誌こそが極上の娯楽だった。(続)

戸部田誠(とべた・まこと)
ライター。別名「てれびのスキマ」。『笑福亭鶴瓶論』が8月10日に発売

AERA 2017年7月31日