●環境になじめるのか

 背番号は「02」。Jリーグなどでは1桁の番号に0を付ける慣習はないが、メキシコではこうした表記が伝統的だ。2番にした理由については、世界平和を意識し、2とPEACE(平和)サインをつなげたという。日本代表での4番と同様、攻撃的選手が2番を付けることは珍しく、これも独自の感性を持つ本田らしい選択なのかもしれない。

 地元メキシコメディアも「日本のビッグスターに期待」「ホンダはメキシコリーグの目玉になる」と歓迎ムード。だが日本人にとってメキシコリーグはやはり未知数だ。

 パチューカは6度のリーグ優勝を誇る強豪だが、首都メキシコシティから約80キロに位置する地方クラブでもある。標高約2400メートル(富士山の5合目と同程度)にあり、空気が薄いため、空気抵抗も小さく、ボールの弾みなども違うとされる。本田自身も「気圧は違いすぎる」と話しており、慣れるまでは時間がかかる可能性もある。現地メディアのトム・マーシャル記者も「ホンダの才能は知っている。だが活躍できるかどうかは、環境にうまくなじめるかがポイントになるだろう」と指摘。代表の活動を考えれば、日本との往来が欧州以上に負担となりかねないとの危惧もある。

 ただ強靱な体が活躍の大前提となるのがメキシコのサッカー。フィジカルの強い本田はこの点では申し分ない。同リーグは7月21日に前期リーグが開幕。パチューカは23日(日本時間24日)に初戦を迎え、本田のデビュー戦は29日(同30日)の第2節以降とみられている。ロシアW杯までは1年を切ったが、本田は新天地で“失った立場”を取り戻すことができるか。

(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2017年7月31日