環境省提供
環境省提供

 「殺人アリ上陸」「米国では毎年100人以上死亡」──神戸港で荷揚げされたコンテナからヒアリが発見されたことで、危険が叫ばれるが、根拠は確かだろうか。

 5月26日、兵庫県尼崎市でアリのコロニーが発見され、6月9日、「ヒアリ」であることが判明した。16日には神戸港から少し離れた場所でもヒアリに似たアリが見つかり、2日後にヒアリと確認された。20日にもヒアリに似たアリが見つかり、こちらは翌日、「アカカミアリ」だと確認された。また、23日に大阪府で見つかったアリが、26日にアカカミアリだと確認された。

●アリ塚が定着の目印

 ヒアリもアカカミアリも、毒針を持つアリである。刺されると激しく痛み、大きく腫れ、ときには「アナフィラキシーショック」と呼ばれるアレルギー反応が生じる。ヒアリでは、死亡例も報告されている(アカカミアリの毒性はヒアリほどではないとされる)。そうした問題から、日本ではどちらも「外来生物法」で「特定外来生物」に指定されている。

 ヒアリの原産地は南米の中部だが、米国やオーストラリア、中国など環太平洋諸国に定着している。大きなアリ塚をつくるのが特徴だ。日本ではまだ繁殖は確認されていない。つまり定着していないのだが、日本には大きなアリ塚をつくる在来種はいないので、定着したときにはアリ塚が一つの目印になる。

 一方、アカカミアリの原産地は米国南部から中米にかけて。日本ではすでに硫黄島や沖縄本島、伊江島で定着実績がある。アリ塚はつくらない。

●「殺人アリ」はどれだけ怖いか。

 ヒアリやアカカミアリが見つかった場所はすぐに燻蒸消毒され、近隣には注意を促すチラシが配られた。神戸港近くの幼稚園では砂場利用が中止され、北海道から沖縄まで各地の港は警戒を強めている。

 ヒアリについては、マスメディアもネットメディアも、口を揃えて「米国では毎年100人以上がヒアリに刺されて死亡している」と警告している。もし日本に定着したら、どれだけ死亡者が出るのか。まず気になるのは米国情報の根拠だ。

次のページ