そもそも「どんな食品でも、詰めるだけなら可能」(川端さん)という缶詰だが、缶を開けたとき、食品本来のおいしさを簡単に再現できるかというと、そうでもない。実は同社も、全国から見つけてきたおいしい缶詰300種類以上をバーで提供しているほか、自社でもオリジナル缶詰を開発。ネットショップや店頭で販売もしている。

 たとえば、ヒットしている同社オリジナル商品の「だし巻き」。老舗料亭とのコラボで、関西のおつまみの定番「だし巻き」を缶詰にした商品だが、

「製造工程で、缶への加熱の温度と時間を少しずつ変えながら、味や食感の変化を観察、時間をかけてようやくたどり着いた自信作です」(同)

 なるほど、そのふんわり+ジュワーの食感は、上等な器に盛りつければ、料亭で仲居さんが運んできてもおかしくないレベル。こうして「おいしい缶詰」が続出したころ、東日本大震災をきっかけに防災意識が高まり、保存食としての缶詰も注目されるように。

●家飲みブームにマッチ

 また前後して、おいしくなった新世代の缶詰が「家飲み」「宅飲み」のブームにもマッチ、こうして数年前から空前のグルメ缶詰ブームが起こっている。

 このブームをリードしてきたのが、大手缶詰メーカーだ。明治期から缶詰の販売を行ってきた大手食品卸「国分グループ本社(国分)」は、1990年代以降市場規模が縮小の一途をたどっていた缶詰製品に危機感を感じ、2010年、缶詰製品の新たな展開を仕掛ける。今やグルメ缶詰の代名詞にもなっている「缶つま」シリーズの販売開始だった。

 缶詰を素材にしたつまみのレシピ本『缶つま』(世界文化社)の発売をきっかけに、「おいしいおつまみの素材」という用途を絞り込んだ缶詰「缶つま」シリーズを開発。

「無料のレシピブックなどとともに初年度発売された14アイテムは、500~800円という、缶詰にしては高めの価格にもかかわらず、年間100万個以上を売り上げるヒットになりました」(国分広報部)

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