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転職ドラフト時代 モテ人材で勝負する

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by 渡辺豪

村上太一さん(30)/リブセンス社長/転職の可視化によって、日本の企業文化や雇用慣行のシフトチェンジに挑む(撮影/岡田晃奈)

村上太一さん(30)/リブセンス社長/転職の可視化によって、日本の企業文化や雇用慣行のシフトチェンジに挑む(撮影/岡田晃奈)

「就職、転職活動をする人が最も注意しないといけないのは、求人票に書かれている内容が事実と異なる、ということが当たり前のようにまかり通っている現実です。大手企業や社会通念上『良心的』とされる職種も例外ではありません」

 労働相談に対応しているNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表はこう警鐘を鳴らす。

 転職者の労働相談で目立つトラブルは、「職種のミスマッチ」だ。これは20~30代前半に多く見られるという。

「営業職など若者が敬遠しがちなハードな職種に人員が必要な場合、企業側はエンジニアやデザイナーといった人気の高いクリエーティブな職種で募集をかけ、採用後、営業職に配属するといったやり口がよく見られます」(今野代表)

 背景には空前の人手不足がある、と今野代表は言う。

「人材を集めるためには本来、賃金アップなど待遇面の充実を図るべきですが、実際には『だまして人を集めよう』と考える企業が横行しています」

 今野代表が相談を受けたケースでは、求人票に「月給30万円」と書かれていた会社に転職すると、基本給15万円で、残業分の15万円を加算した金額だった例もある。

 企業優位の典型例が日本の求人票の定番ともいえる「当社規定による」という表示だ。これだけでは意味不明のため、企業側には具体的な説明義務があるが、たいていは内定後に通知される。採用される側の労働者が内定前に問うのは、雇用主の心証を害するリスクもあり、なかなか言い出しにくいのが実情だ。今野代表は言う。

「企業側はそうした労働者の弱みに付け込んでいるのです。労働者はとにかく採用企業を信じ、ブラックボックスの中に飛び込むしかないのが実情です」

●守ってくれない法律

 労働基準法15条は雇用契約を結ぶ際、労働条件の明示義務を雇用主側に課している。しかし問題は、義務付けられた明示時期が募集段階ではなく契約締結時であるため、違法性を問われにくい点にある。

 厚生労働省は今国会で、労働条件の明示義務の厳格化を図る職業安定法の改正案を提案している。しかし、今野代表はその実効性に懐疑的だ。

「改正案の内容が企業側に甘く、実効性に疑問があります。そもそも刑事的な立件には膨大な労力がかかるため、今日の違法残業問題と同じで、一部の企業は取り締まられるものの、『求人詐欺』の横行を全面的に阻止することは難しいでしょう」

 今野代表は著書『求人詐欺』(幻冬舎)で、被害回復の方法も解説している。ただ、労働条件に関するトラブルは、たいてい「内定後」や「採用後」に表面化するため泣き寝入りせざるを得ないケースが目立つという。転職後すぐに辞職すると履歴書にキズがつくため、後悔しながらも、転職先の会社にとどまる人も少なくないのだ。


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