●余剰座席はもう出ない

 同社は経営が行き詰まっていたにもかかわらず、3月24日に航空券の発券に必要な国際航空運送協会(IATA)への4億円の支払いができなくなる直前まで、旅行の申し込みを受け付けていた。もっと早く手を打てなかったのか。ある関係者は、同社の内情をこう明かす。

「破産寸前の経営状況だと知っていたのは、社内でも数人でした。幹部でさえ、詳細な状況は知らされていなかった」

 このため、新聞やネットの広告もストップできなかったばかりか、この春に卒業する約50人の大学生に内定を出すなど、実態に見合わない経営が行われてしまったと指摘する。

 さらに、経営状況が悪化した背景には、業界を取り巻く状況の変化もある。

 てるみくらぶのツアーは、航空会社から余剰座席を安く買い取り、安価なツアーを組むことで成り立っていた。しかし、航空業界では数年前から航空機の小型化が進み、余剰座席は減少していた。余剰座席が出ても、航空会社が直接販売するケースも増えて、需要予測や「インベントリーコントロール」と呼ばれる座席管理を強化。以前のように、大量の余剰座席が生じることはなくなった。

「トラベルコ」のようなサイトを通じて複数の旅行会社のツアーを一括検索し、代金順に並べて比較することが一般的になったいまは、1千円でも高いと表示される順番が後になってしまう。これが価格競争の激化に油を注いでしまった。

 戸崎さんはこう指摘する。

「もはや格安航空券頼みのビジネスモデルは限界です。旅行会社は原点に返り、プロならではの高付加価値の旅行企画で勝負しないと生き残れない時代になっています」

 甘い経営見通しと隠蔽(いんぺい)体質が招いた今回の倒産で図らずも明らかになったのは、「格安旅行ビジネス」の終焉(しゅうえん)だった。

(編集部・市岡ひかり

AERA 2017年4月10日号