「本当に申し訳ありませんでした」と、時折声を詰まらせながら謝罪する山田千賀子社長。3月27日以降のツアーに申し込んだ人は航空券やホテルの支払いが済んでいない可能性が高いため、出国しないよう説明した/3月27日、国土交通省で (c)朝日新聞社
「本当に申し訳ありませんでした」と、時折声を詰まらせながら謝罪する山田千賀子社長。3月27日以降のツアーに申し込んだ人は航空券やホテルの支払いが済んでいない可能性が高いため、出国しないよう説明した/3月27日、国土交通省で (c)朝日新聞社

 格安旅行会社のてるみくらぶが倒産した。影響は最大で9万人にも及ぶ。綱渡り経営と隠蔽体質に加え、大きな「変化」が業界を襲った結果だった。

 3月27日、格安旅行会社てるみくらぶが東京地裁に破産を申請し、手続き開始の決定を受けた。帝国データバンクによると負債額は約151億円。旅行会社の倒産としてはリーマン・ショック以降最大だ。

 1998年に創業し、オンライン予約を中心にハワイやグアムのほか、韓国や台湾などに強いとされていた同社。破格の値段設定が売りで、旅行好きの間では知られた存在だった。

 8万~9万人がすでに入金した99億円もの旅行代金は、同社が加盟する日本旅行業協会(JATA)の弁済業務保証金制度の対象となるが、限度額は約1億2千万円。返金されるのは、1%程度となる可能性が高い。

●申し込み直後に全額

 今年6月下旬に夫婦でベトナム旅行を計画していた女性(31)は昨年末、旅行比較サイトのトラベルコ経由でてるみくらぶのツアーを見つけた。人気のビーチリゾート、ベトナム・ダナン7日間のツアーで、ホテル・航空券込みの料金が2人で15万円。しかも、宿泊先は五つ星ホテルのハイアットリージェンシーだった。

 他のツアーと比較しても数万円近く安く、過去にハワイ旅行で同社を利用していた安心感も手伝って、疑いを持たずに申し込んだ。

 しかし、その後届いたメールには「2日後までに旅行代金を全額入金してください」との指示。海外旅行の場合、出発間際の場合を除き、申し込みから数日後までに旅行代金の一部を「申込金」として支払い、出発の1カ月から20日前ごろまでに残金を支払うのが一般的だ。

「出発まで半年近くあるのに入金が早いな、とは思いました。でも、安いので仕方ないのかな、と。もっと疑うべきだったのかもしれませんが……」

 旅行や航空産業に詳しい首都大学東京特任教授の戸崎肇さんは、こう指摘する。

「早期に代金を入金させて日銭を稼ぎ、ようやく資金を回す自転車操業状態だったのでは」

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