「有事の際、在日米軍が韓半島(朝鮮半島)に戦力を投入する前に制圧するという意図を見せた」

●日本参戦狙う北の戦略

 韓国・西江大学の金英秀教授は別の見方だ。北朝鮮はこれまで軍事的な緊張を高め、米韓などを交渉のテーブルにつかせ、譲歩を引き出すのが常套(じょうとう)手段だった。

「日本がカッと怒るのを望んでいるのではないか」

 韓国に亡命した北朝鮮の太永浩・元駐英公使の見方はさらに異なる。8日、日本メディアと会見し、北朝鮮が在日米軍基地を攻撃すれば、「日本は黙っていないだろう」と語った。朝鮮半島で日米韓対北朝鮮の構図になれば、「中国は自動的に介入する」。つまり、日本をあえて攻撃すれば、中国から軍事支援を得られるとの見立てだ。

 いずれの見方にも賛否がある。確実なのは北朝鮮の弾道ミサイル能力は急速に向上しているということだ。

「ノドン」などは発射台付きの車両に搭載されて運用される。事前に発射の兆候をつかむのが難しい。さらに2月に発射した新型弾道ミサイルは固体燃料が使われたとされる。従来の液体燃料と違い、機体に燃料を注入する作業が省略できるため、事前察知はさらに難しくなる。また、同時に多数発射されれば、迎撃もその分、難しくなる。

 核・ミサイルの能力が向上している間、オバマ米政権の北朝鮮政策は「戦略的忍耐」だった。非核化に向けた具体的な行動を見せない限り、対話には応じない。これに日韓も同調していた。

 オバマ政権が終わりに近づいたころ、日韓の北朝鮮政策を担当する高官に「戦略的忍耐」について聞いた。答えは同じ。「成果があったとは言えない」。続けた言葉も同じだった。「じゃあ他に何ができたのか」

 忍耐は限界を超えた。(朝日新聞ソウル支局・東岡徹)

AERA 2017年3月20日号