今も圧倒的な販売台数を誇るガソリン車を、環境対策の視点で市場から排除し、エンジンではなくモーター電力の車に強引に切り替えさせるという政治主導の流れに、自動車メーカーは対応に追われている。HVとEVを融合させて家庭のコンセントからも充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)を開発するなど試行錯誤が続くが、世界的に勢いを増す環境志向の先には、EVをエコカーの基準としたい政治的な意図が見え隠れする。

 では、日本の自動車業界はどう対応しているのか。

 2月15日、新型「プリウスPHV」(左写真)を都内で発表したトヨタの内山田竹志会長は「EVが世界中で選んでもらえるようになるには、まだ時間がかかる」と述べ、こう強調した。

「石油が自動車エネルギーの主流である時代は続く。そんな中、二酸化炭素(CO2)削減に貢献できるのはPHV。エコカーの本命であり、これからのエコカーの主流になる車だ」

 新型プリウスは、バッテリーの容量を約2倍に増やし、旧型プリウスの2倍以上の68.2キロを電気で走行できる。価格も通常のPHVより低い326万円からに抑え、割安感で普及を狙う。

 そのトヨタもEVを無視しているわけではない。すでに開発組織を立ち上げ、HVで培ったモーターなどの技術を生かし、20年をめどに量産する考えだ。国内でいち早くEV生産に打って出た日産も、20年度までに150万台をEVだけで販売するという。

 世界的なエコカー競争で主導権を握ろうと各社が独自に戦略を打ち出す中、「日本は、国の戦略がまとまっていない」と、EVに詳しい早稲田大学の逢坂哲彌・特任研究教授は指摘。EV最大市場の中国などで現地生産が増えれば、日本の技術が流出する可能性があると懸念する。

 例えば、国内の電池メーカーは高い技術力を誇るが、価格の面で海外メーカーに太刀打ちできずシェアを減らしてきた。EVシフトで、より高性能の電池のニーズが高まれば反転攻勢に出るチャンスだが、落とし穴もある。

「EV化が進めば進むほど、日本のトップ技術が世界に普及し、日本だけの技術でなくなる可能性がある。きちんとした全体戦略を立てなければ、世界市場シェアがほぼ100%から20%以下に転落した液晶パネルやDVDプレーヤーの二の舞いになりかねない」(逢坂教授)

(編集部・山本大輔、山口亮子)

AERA 2017年3月6日号

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