遠藤さんのアドバイスに沿って、取材や撮影で必要な条件などを伝えていく。徐々にイメージが明確になり、具体的な車の造形がどんどんスケッチで描かれていく。時間にして約2時間、ラフスケッチは十数枚に及び、最初の打ち合わせは終わった。

「最初は、実現性はあまり考えずに、キーワードをなるべく多く出してもらうことが大切。思わぬアイデアに結びつくことも多いですから」(小崎さん)

 それから約2週間後。最初のラフが、詳細なイラストと構造を計算したコンピューター支援設計システム(CAD)で具現化されていた。ボディーはタフな使い方を想定してアルミパネルに。三脚などが載せられるハイルーフとなっていて、カメラマンが上半身を乗り出して撮影することが可能。ハンドルを外せばパソコンの作業台が現れ、電源車両にもなる。車体側面や後部の平面をAERA表紙やスポンサーのラッピングスペースとしても使用できる……など、口頭で伝えた要望がしっかり盛り込まれていた。

「ただ、機能面だけ追究してもつまらない。デザインだけでAERAを表現するため、後方部をシュッと絞ったシルエットにしたり、丸みをつけて当初案にあった『かわいらしさ』も残したりしました」(遠藤さん)

●費用は「こだわり」次第

 コンセプトカーとはいえ、制約なく作れるわけではない。同社の場合、基本となるのは、トヨタ車体の超小型EV「コムス」の規格。シャシーや動力系統はコムスの基盤を活用し、ボディーだけをカスタマイズすることで、費用を抑えている。

「150万円くらいで作るなら、ボディーだけを新しいデザインにしたほうが自由度が高い。動力部分まですべて作り替えると軽く1千万円を超えるし、安全性の保証ができない。車検取得も必要となり、ハードルが高くなってしまう」(小崎さん)

 次の工程は、模型による立体化。イラストを基にすぐにウレタン模型で立体化し、CADと合わせて形をチェックする。この段階で課題が見えることもある。

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