英国は、EUがこれまで契約してきた様々な開発プロジェクトなどに名を連ねている。たとえ実施がまだ先の話でも、出資の約束は約束だ。今離脱するからといって、その分を免除されるわけにはいかないぞ。EU側はそう主張する。

 この主張には一定の正当性がある。だが、この正当性をどこまで認めるか。2019年分まで? 20年分まで? もっとずっと先まで? EU側は、なるべく先まで、英国の支払い義務を確保したい。この話が決着するまで、ほかのことは議論しない。それがEU側のスタンスだ。

 それに対して、英国側は離婚条件問題と並行して、離婚後のお付き合いの仕方も協議したい。家族同然? ご近所付き合い? 絶縁状態? 英国としては絶縁したうえで、それでも自分に都合のいいご近所付き合いモデルを構築したい。それは慰謝料次第でしょ? EU側はそう主張してやまない。どうなることやら。メイ氏にとっての波乱の3月がもうすぐそこだ。健闘を祈る。

AERA 2017年2月27日号

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浜矩子

浜矩子

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

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