●新しい気づきが見える

 これを見ると、人口の多さが高齢化と必ずしも関係しないことが分かる。ロシアを除く欧州で最も人口が多いドイツの高齢化率は突出しているが、次に人口が多いフランス、英国では低く、さらに人口が少ないイタリアではドイツ並みに高い。ドイツ国内では北部で、イタリアでは北中部で、より高齢化が進む。

 ヘニッグ氏は作製したカルトグラムを参考データとして、多くの人たちの研究や学問に役立ててもらいたいという。それならばと、独伊で高齢化率が高い理由を自分なりに調べてみると、1人の女性が一生に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率(TFR)と重なった。内閣府によると、14年のTFRはフランスが1.98、英国1.81と先進国の中でも高く、逆にドイツは1.47、イタリア1.37で、少子高齢化にあえぐ日本(1.42)並みに低い。カルトグラムを入り口に考察を広げていけば、新たな発見にもつながる。

 もう一つの例が、紀元前2150年以降に世界で記録された地震の強さや発生地を集約したデータを重ね合わせ、世界の震災リスクを色分けした地図だ。赤色が濃ければリスクは高く、青色が濃ければリスクは低い。日本のように人口が多くてリスクが高い所は、赤の面積も広くなり、被災者数も多くなる危険性がある。逆に赤の範囲が小さい場所でも、建物の耐震対策が進んでいないなどの理由から、途上国や離島に深刻な被害が出る危険性を示唆している。

 ヘニッグ氏は同様の手法で、HIV感染の広がり、北極の氷の厚さ、世界のワイン生産量、EUの域内貿易の現状、原子力とそのリスクなど、多くのテーマでカルトグラムを作製。全てをホームページ「Views of the World」で公開している。(編集部・山本大輔)

AERA 2017年2月20日号