●キーワードはクリア

 訴える内容も同様に分かりやすく、大統領選立候補のころから全く変わっていない。だからトランプ政治を読み解くキーワードもはっきりしている。

 繰り返されるのは、「米国第一」という言葉だ。

「すべての決定が、米国の労働者や米国民の利益になるようにします」

「米国の生き方を誰にも無理強いしようとはしません。誰もの模範として光を放つようにしたい」

 まさにトランプ氏が夢見る米国像。理想を実現するために、

「新たなビジョンが私たちの地を統治します」

 具体的にはどうするのか。

「守るのは二つの単純なルール。米国製品を購入し、米国人を雇用する」 

 だから、トヨタなど自動車産業各社に対し、米国内での工場建設や雇用創出を執拗(しつよう)に迫る。

 政治経験のないビジネスマン出身の大統領であることを美化する発言も繰り返している。

「口先だけで、何も行動しない政治家はもう受け入れない。中身のない話をする時間はおしまい。行動するときがきた」

●「偽のニュース」の陰に

「民意に寄り添う国政」は、さまざまな利権にがんじがらめになっている職業政治家ではなく、経験豊富なビジネスマンの自分だからこそできるというのがトランプ氏の主張だ。

 政治的に正しいことが国民にとって正しいとは限らないとして、既得権益を攻撃する時に象徴的な言葉として使ってきた「political correctness(政治的適切さ)」も、トランプ氏を読み解く重要なキーワードだ。

 日常的に英語を使っていない人にも理解しやすいトランプ英語だけに、トランプ氏の言葉にじかに触れ、トランプ政権の行方を自分自身で考えることができるというのは魅力だ。

 会見や演説内容はネットで全文を読むことができるし、トランプ氏が就任後も書き込みを続けるツイッターのフォローも勧めたい。

 気をつけなくてはならないのは、間違った情報も多いこと。トランプ氏は自身のツイッターで、就任式をテレビ視聴した米国民が「4年前よりも1100万人も多い」と強調。ホワイトハウス報道官が、オバマ前大統領の1期目の就任式よりはるかに少なかったとされる参加者数の報道に怒り、「過去最も参加者の多い就任式だった」と発言して全世界をあきれさせた直後の書き込みだった。

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