運営する医療情報サイトが、根拠のあいまいな医療情報を掲載した問題で謝罪したDeNA経営陣。左が南場智子会長、右が守安功社長
運営する医療情報サイトが、根拠のあいまいな医療情報を掲載した問題で謝罪したDeNA経営陣。左が南場智子会長、右が守安功社長

 思想家・武道家の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、哲学的視点からアプローチします。

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 IT大手DeNAが運営する医療情報サイトが、根拠のあいまいな医療情報を掲載したために公開中止に追い込まれた。ネット上の閲覧数が上がると広告収入が増える仕組みなので、とにかくページビューを増やしたい。そこで外部ライターには多くのキーワードを盛り込んで検索結果の上位に来るように書くこと、既存記事のコピペであることがばれないように文言を書き換えることがマニュアルで指示されていた。

 アメリカ大統領選挙ではネット上に大量の偽情報が飛び交った。ロシアのハッカーがトランプ氏を当選させるために組織的に動いたということも、CIAは報告している。

 これについて「ネット情報の信頼性を損なった」という批判をしても始まらないと私は思う。ネット情報は所詮は「その程度のもの」である。そして、この事件を手厳しく批判するテレビも新聞も、情報の信頼性においてそれほどアドバンテージを誇れるわけではない。

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内田樹

内田樹

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

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