「過去の例にならえば、中国は必ず、アメリカ新大統領をテストしにくるはずです」

 ブッシュ大統領就任後の01年4月、南シナ海上空で米軍の偵察機に中国機が衝突する事件が発生。オバマ大統領就任後の09年3月には、同じく南シナ海で米国の調査船を中国海軍が妨害する事件が起こった。

「在日米軍の駐留経費負担問題」「日本核武装」発言などで、日本を揺さぶったトランプ氏。最終的な政権の幹部人事も途上とあって、日米同盟の見直し、対中国戦略の具体像ははっきりしない。来年1月20日に就任するトランプ大統領の誕生後に、再び中国が米軍の出方を探りにくる可能性はある。

●新大統領を試す中国

 その舞台は、南シナ海から台湾、尖閣諸島、沖縄、九州まで続く、中国が対米防衛戦略の「前線」として重視する「第1列島線」だ。元海将で、金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸さんは、こう話す。

「軍事力で米国に太刀打ちできない中国の狙いは、いかに米国を巻き込ませず、尖閣をとるかということ。仮に尖閣が有事になりそうな状態になった場合、米国が日本の期待通りに動くのか。仮に動かなければ、尖閣諸島を奪いにくるだろう。中国は南シナ海もそうした力の空白を突き、実効支配を進めてきた」

 実際、中国は1980年代半ばにベトナムのソ連軍が縮小すると、南シナ海・南沙諸島に進出を始め、92年にフィリピンから米軍が撤退すると、南沙諸島の一部を奪った。14年から大規模な埋め立てを始め、現在中国は合計六つの環礁を実効支配し、軍事基地化を進めている。

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