お店目当てと、その日のママ目当てのお客さんのダブルの集客が見込めるなど、「日替わりママ」にはメリットが多い? (※写真はイメージ)
お店目当てと、その日のママ目当てのお客さんのダブルの集客が見込めるなど、「日替わりママ」にはメリットが多い? (※写真はイメージ)

「どうせ同じおじさんのご機嫌を取るなら、ライターなんかより、スナックのママでもやったほうがどれだけ楽しいか」

 ライター生活四半世紀。取材相手のおじさんを持ち上げるたび、そう何度も独りごちた。その「夢」が、ようやくかなう。

 ゴールデン街には、曜日によって学生や会社員がママを務める「日替わりママ」の店が少なくない。どうせママを雇うなら、お店目当てと、その日のママ目当てのお客さんのダブルの集客が見込める日替わりママの店。そんな選択が増えているらしい。

 ガイドブックで見つけたのが、1日限りの店長体験もOKの「無銘喫茶」。カウンター8席とソファ席が2階にあって、料金は一晩1万5千円から(月~木、日曜)。飲み物、食べ物などは基本店長が用意して、自由に店を運営していいという。

 さっそく月1回開かれている「説明会」なるものに出かけてみる。6人の出店希望者が集まったが、「いつか開くお店の予行演習で」「お気に入りの日本酒をふるまいたくて」と、動機はさまざまだ。ここでお店の設備の使い方などを習ってから、日にちを決めて契約書を交わす。いよいよ私も、憧れのゴールデン街ママのはしくれじゃん!

●ママ風着物で開店!

 ただし、楽しかったのはここまで。開店までにやることが山ほどある。説明会で聞いた「一見さんを呼びたいなら、外国人をターゲットに」というアドバイスに従って、看板代わりの英語のポスターを作ったり、おもてなしの着物ママを売りにすることにして、歌舞伎町のお水嬢向けに、着物のレンタル、着付けからヘアまでを格安でやってくれるレンタルブティックも予約しなきゃだ。

 当日は、朝から酒類などを買い込むため、近所のスーパーと家を何度も往復。酒選びも時間がかかる。お金をもらって出すわけだし、夫によく言うように、「大五郎の大ボトルでも飲んどけ」というわけにはいかない。

 気がつけば、着物の予約時間も迫っている。大慌てでイケアのブルーバッグをパンパンにして、いざ出発! この日、一番機嫌がよかったのは、レンタルブティックのお姉さんに事情を話して、ママ風の着付けとヘアをやってもらったとき。ママというより仲居さん風だけど、女に生まれた幸せを実感した。ただし動きが制限され、狭いカウンターで洗い物ひとつできないのが着物ママのネックだ。

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