必要な情報を洗い出して可視化しよう。順序立てて論理的に説明しよう。頭ではわかっていても、実践することは難しい。自分たちで手を動かしてパンケーキを作る、という作業に落とし込んだことで、誰もが体感できたようだ。
●「もしも」が抜けていた
そもそも、エンジニアを抱えていないロフトワークに、「プログラミング脳」班が生まれたのはなぜなのか。
当時、会社が抱えていた課題のひとつが「業務の効率化」だった。業務の分担や引き継ぎがうまくいかず、一人で抱え込みすぎて、パフォーマンスが落ちているケースが多く見られたという。
班長としてワークショップの指導役を務めた、テクニカルディレクターの大森誠さん(35)は、元プログラマーだ。
「自分の業務が『見える化』できていない人が多かったのだと思います。そうした課題の解決策として、プログラミングの手法や論理的思考を学べばいいのではないか、と考えました」(大森さん)
この班に参加した吉澤瑠美さん(32)は、マーケティングを担当していた。
こう振り返る。
「クライアントとの打ち合わせも、グレーなまま終わることが多かったと思います。事前にアジェンダを作って臨んでも、その通りいかないことのほうが多い。ずるずると打ち合わせが続き、結局何が決まったかわからない状況でした」
「プログラミング脳」班は、3カ月かけてプログラミングのエッセンスを学んでいった。
業務に生かすことを念頭に置いて、大森さんが重視したことは二つ。「分解すること」と「時系列の概念」だ。
最初に取り組んだのは、自分の行動をフローチャートに落とし込む練習だ。
「ランチに行くフローチャートを書く」というお題を設定し、それぞれがどういう思考で行動しているか、分解して考え、時系列を整理した。できたフローチャートの一例が左の図だ。まず時計を見て時間を確認し、仕事が一区切りついたかどうかを考える。「ついているとき」「いないとき」で分岐も発生した。
その後は、複数フロアにまたがる社内の掃除の手順など、もう少し複雑なフローチャートも作っていった。