写真部・岸本絢
写真部・岸本絢

 パンケーキ作りを通して、プログラミング思考を学ぶ──。

 そんなユニークなワークショップを社内で敢行した会社がある。東京・渋谷にあるウェブや空間のデザインを手がけるクリエイティブエージェンシー、ロフトワークだ。

 ロフトワークでは、部署の垣根を越えた「班」活動が盛んだ。3~6カ月ごとに「ヨガ」「英会話」「ビジネス女子力向上」「論理的思考」などの体得に取り組んでいる。2013年に編成された班のひとつ、「プログラミング脳」班が、このワークショップを企画した。

●無意識に判断していた

 発想の原点は、「プログラミングと料理には共通点がある」。プログラムは、順序に間違いがあったり抜けや漏れがあったりしては動かない。料理も同様に、工程が正しく明確に示されなければ、おいしく作ることができない。

 ワークショップは、インタビュアーと回答者に分かれて、パンケーキ作りの工程をひと通り洗い出すことから始まった。

 パンケーキが選ばれたのは、比較的作り方が簡単で、多くの人が作ったことがあり、工程を洗い出しやすいと思われたからだ。

 一連の工程をアクティビティー図に書き起こしたら、実際にパンケーキを作る作業に入る。その時、アクティビティー図に書かれていないことは一切しないのがワークショップの原則。なぜなら、コンピューターはプログラムに書かれていることしかしないからだ。

 全員でもう一度、アクティビティー図の工程に漏れがないかを確認。そのうえでパンケーキ作りを始めたのだが、

「卵の殻がボウルに入ってしまったときのための、『卵の殻を取り出す』という工程が書かれていない」

「混ぜるって、いったいいつまで混ぜるの?」

 などと、指示が抜け落ちているところが次から次へと見えてくる。日頃、どれほど多くのことを無意識に、あるいは「あうんの呼吸」のようなもので判断していたのか、実感できた瞬間だった。

「火力の指示もあいまいで、パンケーキが焦げてしまった。手順の中に入るべき『分岐』がなかったことで、こんな結果を招いてしまった」

 と、ある参加者は振り返る。

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