日本発、薬使ったがんの「第4の治療法」は今年のノーベル賞候補 (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

日本発、薬使ったがんの「第4の治療法」は今年のノーベル賞候補

このエントリーをはてなブックマークに追加
塚崎朝子AERA#ノーベル賞
京都大学名誉教授・本庶佑氏は、PD-1の発見でがん免疫療法にブレークスルーを起こした。ノーベル医学生理学賞の呼び声が高い (c)朝日新聞社

京都大学名誉教授・本庶佑氏は、PD-1の発見でがん免疫療法にブレークスルーを起こした。ノーベル医学生理学賞の呼び声が高い (c)朝日新聞社

 東京大学教授で国立がん研究センター研究所長を兼ねる間野博行氏は、医師になって初めて診た患者が忘れられない。

 薬が効きにくいことが予想された白血病なので、大量の抗がん剤を投与。その後、死亡した。遺体を解剖して調べると、死因は白血病そのものでなく、薬の副作用による免疫不全──1984年のことだった。

「こんな大ナタで人間をたたくような治療ではダメだ」

●初の化学療法は兵器発

 現代のがん治療で、「手術療法」「放射線療法」と並んで3大療法と呼ばれるのが「化学(薬物)療法」だ。局所にあるがんを直接治療するほかの2療法と違い、血液を通じて抗がん剤を体の隅々まで運び、体内に潜むがん細胞を攻撃。全身的な治療に効果があるとされる。

 46年、化学兵器のマスタードガスの毒性を弱めて悪性リンパ腫の治療に応用したのが、最初の抗がん剤とされる。100年に及ぶ放射線療法の歴史に比べれば新しい。

 開発が活発になったのは50年代末。血液のがん以外の固形がんで、手術が不可能な進行・再発がんの治療に道を開く狙いだった。がん細胞の代謝を阻害する薬に始まり、抗菌薬系、白金製剤、天然物質から抽出した成分も用いられるようになった。抗がん剤単独で根治の道は険しいが、一部のがんでは、放射線療法との組み合わせで根治が見込めたり、腫瘍が縮小して切除に持ち込めたりするものもある。

 しかし、抗がん剤は、その成り立ちからして、「毒をもって毒を制す」薬だ。がん細胞を制するためとはいえ、毒物を体内に入れれば、正常な細胞を傷める副作用から逃れられない。

 このため、ナタを振るうように広い範囲をたたくのではなく、がん細胞だけをピンポイントに狙える抗がん剤が待望されていた。これが最初に形になったのが、98年に米国で承認された乳がん治療薬のハーセプチンだ。

 乳がん患者の4分の1に見られる遺伝子変異に着目。乳がん増殖に関わるHER2というたんぱく質だけを狙う。次いで2001年、慢性骨髄性白血病の治療薬グリベックが登場した。白血病細胞増殖に関わる特定の分子を攻撃する薬で、患者の大半が完全寛解(白血病細胞が消失)に至る「夢の薬」になった。特定の分子を狙い撃ちにするこれらの薬は「分子標的薬」と呼ばれる。

 前出の間野氏は血液内科が専門だった。グリベックの驚異的な効果を目の当たりにして、感じるものがあった。「◯◯がん」と言っても、それは様々な遺伝子によって起きるサブグループに分かれる。そして、それぞれのがんの分子機構を解明すれば、効果的な化学治療法を開発できる可能性がある、と。

 がんを起こし得る遺伝子を探す中で、年間約7万人と日本人の命をもっとも多く奪う肺がんに照準を定めた。


トップにもどる AERA記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい